糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

今度こそレンズ豆についての話

週に2回レンズ豆を食べる女性は、月に1回未満しか食べない女性よりも、乳がん発症率が24%も低いという研究結果が出ています。
レンズ豆を食べると血糖値が安定し、この小さなお豆1/4カップで、タンパク質13g、食物繊維11g、鉄5mgを摂ることができます。スープやサラダに入れたり、サイドディッシュとして活用してみてください。

 

というアピールを行っています。
他のサイトでも、
インド料理などによく使われている、このレンズ豆なんですが、高たんぱくなのに低脂肪、脂質をほとんど含まず、ビタミン・ミネラル・鉄分・食物繊維などがバランスよく含まれています。
ビタミンB群、ナイアシン、パテントン酸、葉酸、ビタミンE、カルシウム、マグネシウムなどなど、入っていない栄養素はないのでは?と思うくらいバランスよく含まれています。
それだけではなく、ポリフェノール、フラボノイド類のカテキンなども抗酸化物質も多く含まれていて、健康のみならず美容という観点でも皮膚の再生、粘膜保護から抗酸化まで、ほんと素晴らしい内容の栄養素が充実しています。
微量栄養素をバランスよく採るというのは非常に大切なことなのですが、なかなかできることではありません。しかしこのレンズ豆を取り入れることで、カロリーを増やさず一気に栄養バランスが上げることができます。

 

 
という感じで褒められています。
さて、レンズ豆の成分について触れていきたいと思います。
あるサイトでは、

◇調理済みレンズ豆2分の1カップあたり:
約230kcal、脂質約0.8g(飽和脂肪酸約0.3g)、炭水化物約40g(正味炭水化物約24g)、糖質約4g、ナトリウム約4mg、食物繊維約16g、タンパク質約18gが目安です。

http:// https://www.esquire.com/jp/menshealth/wellness/g25217271/best-high-protein-foods-181122/

とされています。
私は糖質に着目するのですが、何故か約4gとなっています。
おかしいですね
「糖質=炭水化物-食物繊維」です。
計算上では「40-16=24g」となるはずなのですが、なぜ豆類なのにこんなに糖質量が少ないのでしょうか?
「正味炭水化物」という表記もいまいちよく分からないです。
 
ちなみに別のサイトでは、

レンズマメのカロリーは150g(1カップ)で530kcalのカロリー。レンズマメは100g換算で353kcalのカロリーで、80kcalあたりのグラム目安量は22.66g。炭水化物が多く91.95g、たんぱく質が34.8g、脂質が1.95gとなっており、ビタミン・ミネラルではモリブデンとセレンの成分が高い。糖質の量は66.3g。

 

また、別のサイトでも「乾燥状態で100gあたりの栄養素」が掲載され、ほぼ同値ですので糖質量が4gであるのは非常に考えにくいですね。
 
あるサイトでは、カレーに使ったらいいよと紹介しているのですが、素の文中に「レンズ豆は熱を加えるとほくほくの食感になる」という言葉がありました。
じゃがいもやカボチャのように、熱を加えたらホクホクとなるのであれば糖質を多く含んでいる証拠でもあります。
 
で、レンズ豆は水分を与える事で2~3倍に膨らむようです。
となると単純に1/2、1/3となるわけです。
シンプルに1/2とすると、
エネルギー176㎉ 
タンパク質11.6
炭水化物30.3
食物繊維8.3
糖質22
脂質1.3
という感じでしょうか(単位省略)
レシピを色々見てみると、一人前だいたい乾燥状態で40~60g前後が多いみたいです。
戻したら2~3倍になるわけなので、カレーのように主食で食べるならそれくらいでしょうね。
 
で、ここまでの話から感じるのですが
「そんなに持ち上げられるほどの高い栄養価は持ってなくね?」
と思う訳です。
 
タンパク質には「アミノ酸スコア」というものが存在します。
必須アミノ酸をどれくらい含んでいるかという話なのですが、肉・魚介類は、ほぼ全てが100です。
大豆は以前は100ではなかったのですが、基準が改定されてからは100になっています。
 
レンズ豆は75です。
 
「レンズ豆は、タンパク質と食物繊維が豊富です。スープで食べるのが大好きです」と、アレヴァロ氏はすすめています。
 またレンズ豆は1カップで、1日の推奨摂取量の半分の食物繊維を摂ることができ、タンパク質も豊富です。

 

他のサイトでも「良質なタンパク質が豊富」という話をしているのですが、何を基準に「良質」であり「豊富」としているのでしょうか?
アミノ酸スコアという基準で言えば、動物性たんぱく質に劣り、大豆よりも低いものです。
そして食物繊維ですが、レンズ豆は16.7g含まれていますが大豆には17.1g含まれています。
この2点だけで比較をするのであれば、「別に大豆でよくね?」と思う訳です。
 
また、鉄分が豊富とアピールされてるのですが、レンズ豆(乾燥)9mg、大豆(乾燥)9.4mgで、ここでも大豆の方が多いのですが、そもそも植物性の鉄分を摂取した所で、吸収率ははるかに動物性の鉄分に劣ります。
 
以前の記事でも記載しましたが、「動物性:植物性=3:1」と、約3倍の差があります。
 
 
他のサイトでは、
動物性食品(赤身肉、レバー、魚介等・・・)ヘム鉄吸収率:23~28%
植物性食品(大豆、大豆製品、穀物、野菜、海藻等・・・) 非ヘム鉄吸収率:1~5%

 

『ヘム鉄』の体内への吸収率は約30%、『非ヘム鉄』の吸収率は約5%で『ヘム鉄』の方が高くなります。効率よく鉄を摂るためには、規則正しい食事の中で、『ヘム鉄』の多い肉や魚をきちんと食べることが一番大切

 

 
という様に評価されています。
いくら乾燥状態で100gあたり9mgあったとしても、水で戻せば1/2倍になり100gあたり4.5mgです。
普段食べる量を50gとするなら2.3mgで、これは非ヘム鉄なので吸収される量を1~5%とするなら、0.023~0.115mgしか吸収できない訳です。
比較として肉類で一番鉄分含有量が多い豚レバーは100gあたり13.0mgの鉄分を含みます。
レバニラ炒めでレシピをみたら一人前90gというのがありました。
それだと鉄分が11.7mgとなり、これの23~28%だと2.7~3.3mgを摂取する事が出来ます。
吸収できる鉄分の量がレンズ豆だと0.023~0.115mgで、豚レバーだと2.7~3.3mgです。
 
いくら鉄分が多いと言えども、非ヘム鉄である植物性のものでアピールされても、到底ヘム鉄の吸収力にはかなわないのです。
その食材の鉄の種類を伝えないまま「植物性の食材だけど鉄分が〇〇㎎あるので、貧血にもいいんだ」とアピールされても、「何言ってんの?」「何が凄いの?」と思ってしまう訳です。
「鉄分」という基準だけで判断し、人体にどのような影響を与えるかという部分に全く触れてない。
数字だけしか見てないとこうなります。
 
レンズ豆が人々の主食として存在し、多くの生命を紡いできたという歴史を否定するつもりはありません。
ただ、これだったら何でも置き換える事が出来るんですね。
ご飯が凄い、玄米が凄い、大豆が凄いという感じです。
 
私だったら健康に良く、なおかつ「効率良く栄養を摂取出来る食品」として勧めるのであれば、「レンズ豆を食べろ」ではなく、「レバーを食べろ」と勧めます。
豚レバーを例に出すと、100gあたり
カロリー128㎉と低カロリーで糖質も2.4gと低糖質。
タンパク質も20.4gと高たんぱくでアミノ酸スコア100と必須アミノ酸を摂取出来るので良質なたんぱくでもある。
脂質は3.4gと低くダイエットを気にする方にもお勧めで、鉄分も13mgと豊富で吸収効率も良い。
葉酸も810㎍とほとんどの食材と比較しても断トツで、抱負でビタミンA・B群やビタミンEもしっかり摂れる。
あまり知られてないがビタミンCも20mg含むスーパー食材です。
これだけの理由を基に、「レバーを食え」と勧めます。
 
どちらが説得力があるでしょうか?
 

コレステロールの低下、消化の改善、ダイエットのサポート、健康的な肌や髪の維持など、健康メリットの高い食べ物を集めてみました。

 

と冒頭に述べているのですが、何を基準に「女性が摂るべき」としているのでしょうか?
なぜ上記のように素晴らしい食材であるレバーが選定されてないのか?
また、今回は文中に取り上げませんでしたが、「完全食」と呼ばれるような玉子や牛乳が選定されていないのか?
なぜ12種類の食材の内、9種類が植物性のものが占められているのか?
私にはさっぱり意味が分かりません。
 
次回は、このリストで良い所を挙げて、まとめにしましょうかね。