糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

スーパーフードと呼ばれるチアシードについて

前回からの続きです。
アシードは「プライマリースーパーフード10」として、推奨されているスーパーフードの中の一つとの事です。
これは良いものだとする理由として「簡単・低カロリー・高栄養」という事のようですが、簡単とするのは水に戻すだけで食べられるからという事のようです。
 
さて、栄養価ですが、

アシード大さじ1(12g)に含まれる栄養は、58カロリー、たんぱく質2g、食物繊維4.1g、カルシウム76mg、マグネシウム40mg、亜鉛0.55g、鉄分0.93mg、オメガ3脂肪酸(ALA)2.14g。

 

という事ですが、別のサイトではなぜか15g以上食べないようにという事のようです。
あと食べ方も気を付けないといけないようで、「簡単」ではあるが、「12時間以上水につけてから食べる」という事が必要のようです。
 
発芽毒という「アブシジン酸」により疲労感や腹痛が引き起こされやすいとの事。
 
あとは水分をしっかりと与えてないと便秘であったり、量を食べ過ぎると下痢になったりするとの事。
 
そして15g以上を食べるのを良しとしないのは「カロリーが高い(?)」からとか「まだ分からない事も多いから」という事が理由だそうです。
いやいやいや、ちょっと待ってください。
前回のスーパーフードの話で取り上げたのが、

「食歴」が長く、何世紀にもわたって人々の健康に寄与してきた食品であること。それにより、人体に及ぼす可能性がある、あらゆる問題が解明されており、その安全性に不安をもって食することがなく信頼がおけるもの。

 

というスーパーフードの定義です。
安全じゃないのか?
あらゆる問題が解明されているのではないのか??
この定義に反した文章を記載しています。
この文章の著者は何を基にスーパーフードとして紹介しているのでしょうか?
 
アシード自体も100g当たりのカロリーは486㎉です。
スプーン一杯(12g)であれば60㎉未満です。
この程度で高カロリーだとするのもおかしいです。
 

注)他の食材と比較して、チア・シードがどれだけの栄養をを含んでいるかが分かりやすいように、チアシード1食分(大さじ1)と同じカロリーである58カロリー分の分量と比べてみました。

 そして、このようにわざわざ「58キロカロリーの分量での比較」をされているのですが、カロリー基準で表記している所はあまりありません。

ほとんどがgあたりでの換算をしています。

例えば「100gあたりビタミンB1が〇〇㎎含まれています」とか「商品一袋(10g)でレモン〇〇個分のビタミンCが」といった感じです。

例えば「50キロカロリーでビタミンEを〇〇㎎摂取出来るんですよ」とアピールしている宣伝文句を知りません。

私の視野が狭いからなのかもしれませんが、よく分からないです。

「低カロリーだけど、これだけの栄養が含まれている」という主張なのかもしれませんけどね。

献立作成時に栄養価計算を必要とする管理栄養士だったら必要な知識なのかもしれませんが、これは一般向けなので重量換算の方が「小粒なのにこれだけの栄養がふくまれているんですよ。お手軽ですね」というようなインパクトを与えやすいと思いますが、どうなのでしょう??

私はカロリー計算が面倒臭く感じるので、そこまでの意識はないですし、栄養が含まれているからと言って、それがそのまま吸収されるわけでもないとも考えています。

その話は次回に回します。

 

 

次にオメガ3脂肪酸の量についてです。

アシードはオメガ3脂肪酸(ALA)を2.14g含みます。オメガ3脂肪酸が多いことで知られているクルミを同じカロリー分食べても、0.8mgしか摂れません。オメガ3脂肪酸のタイプが同一ではありませんが、動物性の中でトップ級のさばでも同カロリーだと含有量は0.4~1gです。チア・シードの含有量はダントツです。

  

アシードが断トツの2.14gを含んで、サバでも0.4~1gとあるのですが、これは2.14gではなくて2.14mgのことではないのでしょうか?
このサイトでは100gあたりのαリノレン酸は18mgとあります。
これが12gあたりとなると2.16mgとなってほぼ近い数字になるんですね。
ちなみにαリノレン酸は植物性のものとなるのでサバを多価不飽和脂肪酸に置き換えると100gあたり2.66gとなります。
サバ100gあたりのカロリーが274㎉なので、58㎉換算で行くと、0.61gとなります。
mg換算すると610mgで、チアシードの約300倍となります。
 
圧倒的にサバの方が含有量はダントツですね。
そもそもサバを「58㎉しか食べない」という事はしないと思うので、おかしな基準で比較をしているとも感じますが。
 
また、下記を参照にしますが

DHAEPAも人の体内で合成することができません。α-リノレン酸から合成されるのでα-リノレン酸と同じような働きがあるほか、脳内の情報を伝達する重要な役割を担っています。 DHAEPAは、まぐろ、かつおあじ、さば、いわし、ぶりなど背中が青みがかった魚に多く含まれています。魚が苦手な方はサプリメントやえごま、クルミなどから摂取するといいでしょう。

 

www.kraft-net.co.jp

ヒトを含めた多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPADHAを生産することができるが、α-リノレン酸からEPADHAに変換される割合は10-15%程度である

 


α-リノレン酸からDHAEPAに変換する事は出来るが10~15%しかできないのです。
 
これに当てはめると、2.16mgのうち、0.2mg程度しかDHAEPAへ変換できないという事になります。
さばを直接食べれば、効率良く100gあたりDHA 970mg、EPA 690mgを食べる事が出来ます。
いったい何が凄いのでしょうか?
鉄分も植物性よりも動物性の方がより吸収効率が良いので、赤身の肉を食べる方がはるかに効率が良いです。
 

チア・シードには鉄分が0.93mg含まれます。鉄分が多いことで知られている、牛レバー58カロリー分には1.8mg、ごまには1mgの鉄分が含まれます。比較してみるとチア・シードの鉄分含有量が優れていることが分かります。

 

という話をしているのですが、ヘム鉄・非ヘム鉄の「吸収率」の話はどこに行ったのでしょうか?
動物性であるヘム鉄であれば食品に含まれる30%程度を吸収できます。
ですが、植物性である非ヘム鉄であれば7%程度しか吸収できません。
牛レバー1.8mgであれば、0.54mgの鉄を吸収でき、チアシード0.93mgであれば、0.06mgの鉄しか吸収できません。
 
いやぁ、牛レバーの方が約10倍優れていますね。
 
亜鉛もそうです。

アシードには亜鉛が0.55g含まれています。亜鉛が豊富なことで知られている、アーモンドには0.4g、ごまには0.6g、卵には0.6g。チア・シードも豊富な亜鉛が含まれると言えるでしょう。

 

 
ここでも単位を間違っています。
 
成人男子推奨量でも10mg程度で、耐容上限量は成人男子で40㎎です。
これだと過剰摂取で急性中毒を起こしてしまいかねないですね。
ここでは比較としてなぜか玉子やゴマを引用しているのですが、亜鉛を豊富に持っているとして有名なのはこの記事でも前述されてましたが「牡蠣」ではないのでしょうか?
100gあたりで13.2mgを含有しています。
12g換算すると、1.58mgです。
次に多いのが豚レバーで100gあたり6.9mg(12g換算で0.82mg)
こういった上位陣と比較をしないで、豊富というのはいかがなものでしょうか?
牛肉と同等レベルというのであればまだ分からなくもないのですがね。
 
管理栄養士が監修したとする記事にしては、あまりにもお粗末です。
 
ちょっと長くなったので、次回に回します。
ちょっと追記して次の話題に行く予定ですので、良ければお付き合い下さいませ。
 
以上です。