糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

わかめとネギの組み合わせについて

わかめとネギを組み合わせて食べると、栄養効率が悪くなるとの事ですが・・・

わかめとネギ…これも「悪い食べ合わせ」です。
ネギに含まれるリンが、ワカメに含まれるカルシウムの吸収を阻害します。
一度にたくさん食べる食材でもないので深刻な問題ではありませんが、栄養吸収効率からは良くない食べ合わせです。(2018.10.05の記事)

 

食べ合わせNGな味噌汁の具材
8月23日放送の「くりぃむしちゅーのハナタカ! 優越館」(テレビ朝日系)では、食材の食べ合わせにまつわる知識を特集。栄養的に損している組み合わせや、体に悪い食べ方が取り上げられました。
まず登場した食材は、味噌汁の定番であるわかめとネギ。
管理栄養士・美容アドバイザーの豊田愛魅さんによると、ネギの中には硫化アリルという成分が含まれているのですが、硫化アリルにはカルシウムの吸収を妨げる効果があるそう。
本来は悪い成分ではなく、夏バテ防止などに効果のある体にいい栄養素。効率よく吸収するためには、別々に食べるといいでしょう。(2018年9月26日 12:00の記事)

 

ワカメとネギを食べると、カルシウム吸収が悪くなるので避けましょうというはなしですが、この2つでは主張が異なっています。
前者は「リンとカルシウム」、後者は「硫化アリルとカルシウム」です。
 
まず、「リン」です。
ネギに含まれているリンの量から調べないといけないです。
 
「こねぎ」があったのでそれでいくと、100gあたり36mgのリンが含まれています。
100gあたりです。
ちなみに、ブロッコリーには100gあたり66mgが含まれています。
また、野菜ではなくカルシウム摂取のために積極的に摂ろうと推奨される牛乳には93mg含まれていますし、魚にもサンマで180mg、サバで230mgのリンが含まれています。
さらに、みそ汁自体の味噌にも、100gあたり170mgのリンも含まれていますし、後述する納豆には、190mg(ひきわりだと250mg)含まれています。
最後に、わかめ(めかぶわかめ)は100gあたり26mgのリンを含んでいます。
薬味として使うなら1g程度、具材として使うなら5~10g程度ではないでしょうか?
で、その記事では後半で、

納豆にネギ…○です。納豆菌の整腸作用は世界一、ビタミンB群も豊富です。ネギに含まれるアリシンはビタミンB1の吸収率を高めてくれます。また、納豆の粘り成分ナットウキナーゼは血栓を溶かす働きがあり、ネギも血栓予防効果があるので、血液サラサラの相乗効果です。納豆に含まれないビタミンCはネギが補ってくれるので、この組み合わせは抜群です。

 

と、べた褒めしています。
 
ちなみにカルシウム配合量は、納豆90mg めかぶワカメ77mgであり、こねぎのビタミンC含有量は、44mgです。(ともに100g当たり)
ビタミンB1だと、納豆0.07㎎(ひきわりだと0.14㎎)、めかぶわかめは0.02㎎です。
 
前半では「ワカメとネギのカルシウム吸収力」に焦点をあてて話をし、後半では「納豆とネギの血栓予防・ビタミンB1吸収力」に焦点をあてて話をしています。
 
先ほども話をしましたが、使用量に関しては薬味程度なので1g程度の量だとして話をします。
私の視点は、以下の通りです。
・カルシウムの話はどこに行った?
・ビタミンCが0.4㎎程度で「納豆に含まれないビタミンCはネギが補ってくれる」とする論調
・ビタミンB1もワカメにも納豆にも両者に含まれている
という所の話を切り捨てたり、取ってつけたように話をしています。
 
0.4㎎程度のビタミンC量で、ビタミンCを補ってくれたとするのは、論調としてはかなり強引です。
ちなみにめかぶワカメにも100gあたり2㎎のビタミンCは含まれています。(納豆には含まれてないです)
 
ビタミンB1の吸収量の話をするなら、ワカメの所でもしないといけないと思いますし、カルシウムの話をするのであれば、納豆の時も話をしないといけないと思います。
ワカメの時はネガティブに話をして、納豆の時にはポジティブに話をするというのは、論調の持っていき方としてはあると思いますが、明らかに別物のように話を進めているように感じますし、良いとされる組み合わせと、悪いとされる組み合わせも、そこまで大きな違いを提供出来てないのではないかとも感じます。
 
リンに焦点をあてたら納豆の方が多いし、ワカメなら納豆と同量は普通は食べないです。(メインがワカメしゃぶしゃぶとかなら多くなるでしょう)
他の野菜や動物性たんぱく質の方が、はるかに多い量を含んでいます。
 
ビタミンB1の吸収力の話をするなら、ワカメにも含まれているので、それは引用しないといけないと感じます。
 
ビタミンCの話をするなら、ワカメの時にも話をしないといけないと感じます。
 
ワカメとネギという組み合わせは、私がイメージしやすいのはみそ汁ですが、いかがでしょうか?(あとはワカメスープとか?)
それであれば、僅かずつしか食べない「ワカメとネギ」という組み合わせを使うよりも、もっと別の食材で引き合いにする方が、よほど栄養効率に影響を与えると考えます。
例えば牛乳とパンなら、リン配合量は牛乳93mg、食パン83mgで、合計176mgとなります(100gあたり)
ちなみに食パン6枚切りで約63g、4枚切りで約93gです。
牛乳もコップ一杯で150~200mlくらいでしょうか?
リンだけに着目してデメリットを打ち出すのであれば、この組み合わせとしてはかなり良くない事になります。
物凄くミクロな視点でみているなと感じました。
 
この程度のデータ、そして「リン」の配合量(食べる量)という視点で「ワカメとネギ」を「悪い組み合わせ」とするのは、説得力に欠けると感じます。
 
次は、硫化アリルについての話をします。