糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

わかめとネギの組み合わせ:硫化アリルとカルシウムの話

前回の続きです。
 
わかめとネギの組み合わせについては、リンをベースにしている論調と、硫化アリルをベースにする論調に別れています。
全数を調べてないので分かりませんが、リンを悪役にしているものから硫化アリルを悪訳にするものに論調がスライドしているように感じます。
あくまでも、私の所感です。
 
さて、以前も引用しましたが、改めて。

8月23日放送の「くりぃむしちゅーのハナタカ! 優越館」(テレビ朝日系)では、食材の食べ合わせにまつわる知識を特集。
栄養的に損している組み合わせや、体に悪い食べ方が取り上げられました。
まず登場した食材は、味噌汁の定番であるわかめとネギ。管理栄養士・美容アドバイザーの豊田愛魅さんによると、ネギの中には硫化アリルという成分が含まれているのですが、硫化アリルにはカルシウムの吸収を妨げる効果があるそう。
本来は悪い成分ではなく、夏バテ防止などに効果のある体にいい栄養素。
効率よく吸収するためには、別々に食べるといいでしょう。

 

味噌汁の具として昔から黄金コンビ。でも、栄養面を考えると、意外なことにNGな組み合わせだとか。
わかめに含まれるカルシウムの吸収を、ねぎが持つ硫化アリルという成分が妨げてしまうのだ。
わかめのカルシウムをしっかり吸収するには、タンパク質が豊富な豆腐がベスト。
具の組み合わせを変えるだけで、栄養の吸収率はグンとアップする。
医学ジャーナリストの植田美津恵先生は、
「太陽の光を浴びて、紫外線によって合成されるビタミンDがなければ、カルシウムは体内に吸収されません。ただ食べるだけではダメなので、注意しましょう」
豆腐の味噌汁を食べたあとは、外に繰り出すことを日課にしよう!

 


私の視点では、
「簡単に「NG」とか「絶対ダメ」「無駄」とかいう表現を使って大丈夫なんですか?」
「栄養・栄養の吸収率とあるが、「栄養=カルシウムが中心」の表現になっている」
という感じです。
 
「硫化アリル=カルシウム吸収阻害」という論調であり、そのように作用するというのは知っています。
ただ、この論調だと、「カルシウム摂取にとって効率が良いかどうか?」という所だけにとどまっているのが引っかかります。
 
硫化アリルの特性の話をしていきます。
 

ねぎ、たまねぎ、にら、にんにく、らっきょう等のユリ科の野菜
これらには切ったときにツンとくる刺激臭がありますが、その刺激臭のもとになっているのが、硫化アリルです。
血液をサラサラにして動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞脳梗塞等の生活習慣病を予防します。
また、活性酸素を除去し、ガンの発生を抑えるほか、強い殺菌作用で胃炎等にも効果を発揮します。

 

mirai-zou.co.jp


ユリ科となっているが、ネギ科かも。ウィキペディアではニンニクはヒガンバナ科ネギ属の多年草とあるが、ここでは触れない事にする)
 
で、特性の一つには「熱に弱い」というのがあります。
生で食べると硫化アリルが残っているため強い刺激を受けますが、加熱するとそれが無くなります。
玉ねぎやネギをじっくり加熱すると甘くなるのはそのためです。
という訳で、必ずしも「わかめとネギ」の組み合わせで、極わずかにしか存在しないわかめのカルシウムの吸収阻害に影響するかどうかは、生で食べるか、加熱して食べるかによって変わってくる事になります。
そこの部分を飛ばして、「わかめとネギ」の組み合わせを「NG」とか「無駄」とか「栄養を捨ててる」とかいうのは、思考が偏っているし、言い過ぎだと考えます。
 
この食べ合わせについての論点ですが、
 
①血液をサラサラにして動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞脳梗塞等の生活習慣病を予防します。
また、活性酸素を除去し、ガンの発生を抑えるほか、強い殺菌作用で胃炎等にも効果を発揮します。
 
という事と、
 
②硫化アリル=カルシウム吸収阻害
 
という2つの事実を天秤にかけ、②の方を優先しているから「食べ合わせとして良くない」としているのだと考えます。
 
あくまでも②で悩んでいる人が多数派であればという話です。
 
それでは、①で悩んでいる人はどうすればいいのでしょうか?
だったら積極的に薬味としてでも生で食べるのが当然だと考えます。
①で悩んでいる人にとっては、この組み合わせは「とても良い」となります。
 
このように違った側面を持っているのに、片方だけを持ち上げて「無駄」だの「NG」だの、強い否定を行なうのは、いかがなものか?と感じる訳です。
 
ちなみに、健康食品で「玉ねぎを凝縮しました」とか「粉末にしました」とかアピールして販売していますが、基本的に健康食品であるため、加工の際に熱処理を行ないます。
硫化アリルは熱に弱いです。
という事は、健康食品に硫化アリルの効果を期待する事は、ほぼ出来ないという事になるのでは?
得られるのは「フラシーボ効果」程度だと考えています。
 
とりあえず、ここまで。
もう少し続けます。