糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

高野豆腐が栄養豊富だと言われる奇妙な理由

前回からの続きです。
 
前回はきゅうりの話をしました。
一本当たり(約100gあたり)の栄養価は他と比較して特に特筆すべきものは無いように見られるきゅうりも、100キロカロリー換算(きゅうり約7本分)にするとキャベツやトマトと同等の栄養価を得られるという誘導をして、「きゅうりってスゲーんだぜ?」という記事がカゴメ監修で管理栄養士が記事を書いていました。
ちなみにその記事の比較である「ビタミンC…100mg(トマトの約1.26倍)」という部分も、トマトのビタミンCが100g当たり15mgなので、トマトもわざわざ100キロカロリー換算で計算しているのだと感じます(参考にならないし面倒なので計算してないですが、多分そうだと思います)。
で、トマトのビタミンC100mgを重量で換算すると約666g相当となります。
トマト中サイズ1個分が約200gなので3個分くらいですね。
そら、それだけ食えばその分得られるものは比例して増えていきますよ。
きゅうり7本より、トマト3個の方がまだ現実的かもしれないですね。
だいたいこんな話をしました。
 
で、前回の最後で触れましたが高野豆腐も不思議なアピールをしています。

高野豆腐は、豆腐よりも濃度の濃い豆乳から作り、また乾燥(あるいは凍結)させてドライにするので、栄養分が凝縮されています。100g当たりのたんぱく質は、絹ごし豆腐のなんと約10倍!これには、びっくりです。

 

たんぱく質、すなわちアミノ酸が豊富な食品には、鶏卵、肉、魚、大豆などがあります。
 なかでもアミノ酸が豊富な食品が、大豆から作られる「こうや豆腐」です。
 100g当たりのたんぱく質の含有量を比較すると、鶏卵12.3g、サーロイン(脂身なし)18.4g、マグロ赤身28.3gに対し、こうや豆腐はなんと50.2gもあります。
 ちまたに出回っているアミノ酸飲料と比べてみても、こうや豆腐アミノ酸含有量は、アミノ酸飲料の平均の3~4倍にもなります。つまり、こうや豆腐は、ほかの食品を圧倒するアミノ酸の宝庫なのです。

 

おわかりでしょうか?
 
今回はカロリー比較ではなく重量での比較です。
 
 
高野豆腐の製造工程に触れるのですが、皆さんはご存知でしょうか?
 
まず「豆腐」を作ります。
 
その後で水分を抜くため冷凍します。
 
その後乾燥して水分を飛ばします。
 
これが「高野豆腐」です。
豆腐よりも濃度の濃い豆乳から作るとかよく分からない話をしているんですが、結局は同じ豆腐が原料で、特殊な作り方をしない限りは何も変わらないんですよね。
 
にもかかわらず、高野豆腐が「豆腐の10倍のたんぱく質量!!」となるのは、水分を含んでいるかどうかになります。
高野豆腐の栄養価比較のベースに乾燥状態の軽いものを使用し、豆腐は市販されているような水分を含んでいる状態をベースにしています。
 
そら乾燥していたら軽いから、gあたりでの比較なら軽い方が量が多くなりますよね。
 
高野豆腐は、乾燥状態で市販されているサイズ(7×5.5×2㎝)で1個あたり17g(90キロカロリー)です。
これを水でもどすと、だいたい6倍くらに増えますので約100gになります。
「乾燥状態の高野豆腐」で、たんぱく質量は49.4gです。
「完成している絹ごし豆腐」でたんぱく質量は4.9gです。
この数字を比較して
 

絹ごし豆腐のなんと約10倍!これには、びっくりです。

 

という表現をしています。
私もびっくりですよ。
 
ちなみに、「水に戻した状態の高野豆腐」だと、たんぱく質量は約8.4g程度(上記「乾燥状態の高野豆腐」の17/100で計算)
もっと言うと、「完成している木綿豆腐」だと、たんぱく質量は6.6gになります。
あえて絹ごし豆腐との比較をして、「10倍も差がある」というアピールをしたかったんでしょうかね。
高野豆腐を100g換算すると、だいたい乾燥しているもので6枚分です。
 
イメージしやすいようにリンクを貼り付けますが、この市販品では5枚分で1袋なのでもう一袋必要ですね。
これだけを食えば、豆腐の10倍のたんぱく質を摂取出来ると主張している訳ですよ。
常識的な量ではないですね。
 
フォローのつもりか、文章の後半では
 

前述で、たんぱく質はお豆腐の約10倍と申し上げましたが、一食の可食分にすると、高野豆腐1枚分(16.5g)の粉豆腐のカロリーは88kcal。
冷奴1食分(絹ごし豆腐1/2丁:150g)93kcalと比べると、カロリーは同じくらいですが、たんぱく質は「粉豆腐」8.3g、「絹ごし豆腐」8.0gと、応用が利く「粉豆腐」の方が、ややたんぱく質が多いのです。
まさに、食べるプロテインパウダーですね。

 

なんかよく分からない書き方をしているのですが、だったら最初から1食の分量(1枚分)で書けよと言いたくなります。
10倍って比較をしといて「びっくりした」という前半は何だったのかと。
プロテインパウダー」という言葉を使いたかっただけなのかと。
もともとプロテインパウダーって食べる物だから、「まさに」は何にかかっているんだよと。(ツッコミが細かくなってきたのでもう止めます)
 
ちなみに、もう一個の引用でも同じような基準で記載されています。

当然、ダイエット効果の高いアミノ酸も、豊富に含まれています。こうや豆腐は、まさに「アミノ酸ダイエットのスーパー食材」といえるでしょう。
 こうや豆腐たんぱく質の含有量(1000g当たり50.2g)は、同じ大豆製品と比べても、木綿豆腐6.8g、納豆16.5g、豆乳3.6g、きな粉35.5g、差は明らかです。

 

1000gと酷い誤植だと感じますが、多分100g換算での話だと思います。
これも同じグラム当たりでの比較をしているのですが、なぜ比較対象できな粉を持ってきたのか。
 
きな粉ですよ?
普段からでも100gも食べませんって。
 
数字だけしか見ず、一般的な感覚からずれるとこのような記事が生まれるのだなと感じます。
 
実は過去に同じような記事を書いています。
それはもっと悪質な感じを受けましたね。
ドクター監修という所で、蕎麦は他の麺類と比較して良いものだとする内容です。
言いたい事は同じですが、どんな印象操作をしているかは、興味のある方はリンク先からどうぞ。
 

trdschoolmm99.hatenablog.com

※しまった、引用元を当時は貼り付けてなかった!探したけど元記事を見つけられませんでした。
 
皆さんがこの程度の記事の情報に振り回されないで欲しいと思います。
今回はここまで。