ケトン体悪人説
「飢餓」という言葉を聞いて、皆さんは何をイメージするでしょうか?
言葉の意味自体は、
「食糧の不足によって栄養失調が続き、体調の維持が困難になっている状態である。」
です。
栄養学でも、栄養失調になっている状態を指す言葉があります。
「クワシオルコル」と、「マラスムス」という代表的な栄養失調症です。
一般的に食物の量的な摂取不足を低栄養といい、質的欠陥(食事内容の偏り)による栄養障害を栄養失調と言います。
極端に重賞出ない場合、栄養失調の分類として、この2つが使われます。
簡単に言うと、
クワシオルコル
摂取エネルギー(カロリー)は十分だが、摂取たんぱく質が不足。腹部の膨張や脂肪肝、むくみが発生。
マラスムス
摂取するエネルギー(カロリー)と摂取たんぱく質が低下していて、やせ・激しい消耗・皮下組織(筋肉等)の減少を伴う
栄養状態が悪いのは、マラスムスの方です。
あと、これから進んだ状態で、リフィーディング症候群というものがあります。
リフィーディング症候群とは、マラスムスのような慢性的な半飢餓状態の患者に、大量のブドウ糖を投与した際に発生する一連の代謝性合併症の総称である。
飢餓状態では、体脂肪を分解して遊離脂肪酸とケトン体をエネルギー源とする代謝経路に、生体が適応している。飢餓状態の患者に再栄養を行なうと、エネルギー源が脂肪や蛋白から糖質へ、急速に転換される。インスリン欠乏状態では、Na-Kポンプ活性が低下しているが、糖質が急激に入ると、インスリン分泌が刺激され、細胞のK取り込みが増加して低K血症となる。低K血症は、不整脈の原因となる。
細胞の代謝増加に伴い、細胞のMg取り込みが増加し、低Mg血症となる。糖質の代謝では、多くのPを必要とする。
さらに糖質負荷によりATP産生の増加に伴い、Pが消費されるため、細胞のP取り込みが増加し、低P血症となる。低P血症では、赤血球中の2,3-DPGが低下するので、ヘモグロビンの酸素親和性が増加し、末梢組織、特に心筋など酸素依存度が高い組織で低酸素が出現する。組織の低酸素により、クエン酸回路の機能不全が起こり、その結果、乳酸アシドーシスが起こる。
詳しく(?)は、以前記事にまとめたので、こちらを参照にしてどうぞ。
カロリーの摂取を基準とした状態の変化を順番に言うと、
健康
栄養不足
栄養失調
飢餓
という感じで悪化していきます。
飢餓という言葉の意味からもとれますが、このようなイメージを私は持っています。
カロリーがあれば何とか生命活動を維持できます。
これは人類の歴史が農耕の発展により人口が増加した事からも明らかです。
これに上記のクワシオルコル、マラスムスをあてはめるなら、
クワシオルコル = 栄養不足~栄養失調
マラスムス = 栄養失調~飢餓
という感じになりそうだと思いますが、どうでしょうか?
こういうイメージを持っているので、簡単に「飢餓」という言葉を使っている人がいますが、不思議に思ってしまいます。
糖質の摂取を諦めた体は、ケトン体を作り始めます。
人間は飢餓状態に陥ると体脂肪や筋肉を燃焼させて糖質の代わりになるケトン体を作るのですね。
このダイエット法は明らかに体を飢餓状態に陥らせるものですが、ケトン体ダイエットといって一つのダイエット法になっています。
前回、このような文章を引用しました。
「飢餓状態に陥ると体脂肪や筋肉を燃焼させる」
という事ですが、この部分にとても違和感を覚えます。
エネルギーの消耗の仕方に触れます。
簡単にPFCの3種類で分類します。
糖質は、エネルギーの消費が早く、優先順位は高いです。
これには異論は無いと思います。
すぐにエネルギー・栄養になるから、疲れが取れる(深くは突っ込みませんが)という事を実感できる人は多いと思います。
次に脂質です。
エネルギーの効率が良く、少ない量で大きな力を生み出します。
最後にたんぱく質です。
根本的な生命維持に必要なため、極力減らさないようにします。
たんぱく質も確保できないという事になると、死に至ってしまいます。
糖質が大量にあると、糖質からエネルギーとして利用がされます。
糖質が余分に摂取出来ない状態になると、ケトン体が体内で増えます。
ケトン体が増えるという事は、脂質をエネルギー源として生活をするという事になります。
先にも述べましたが、摂取エネルギー(カロリー)が十分であり、たんぱく質も十分であれば、人は低栄養状態にはなりません。
クワシオルコル・マラスムスの状態には近づきません。
摂取エネルギー(カロリー)が十分でも、たんぱく質が不足すると栄養状態が悪くなり、クワシオルコルという状態になっていきます。
摂取エネルギーとなるものは、糖質・脂質です。(当然たんぱく質もエネルギーになり得るのですが、わかりやすくするため除外します)
エネルギー利用として、この2つがあるのですが、糖質メインでも、脂質メインでも、摂取エネルギーには変わりがありません。
糖質と脂質の摂取量のバランスで次のような変化が生まれます。
糖質 > 脂質 ・・・ケトン体が生まれにくい
糖質 < 脂質 ・・・ケトン体が生まれやすい
「ケトン体が増えた ≠ 飢餓状態」
エネルギー利用の仕方が異なっているだけなのです。
糖質が余分にあるなら、それから使いましょう。
そんで、糖質が適正になったら、脂質を使いましょう。
で、糖質が余分になってきたら、脂質を控えて先に糖質を使いましょう。
という感じエネルギーを利用しているのです。
にもかかわらず、
「糖質の摂取を諦めた体は、ケトン体を作り始めます。人間は飢餓状態に陥ると体脂肪や筋肉を燃焼させて糖質の代わりになるケトン体を作るのですね。」
という言葉を使われても意味が分からないのです。
「飢餓状態に陥ると体脂肪や筋肉を燃焼させる」
という表記がされていましたが、正しくは
「たんぱく質の摂取が十分ではない上に、糖質や脂質の摂取量が少なくなる(十分でなくなる)と、段階を経て飢餓状態に陥る」
ではないかと考えます。
長くなってきたので、続けます。