糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

消化が早いのは、本当に炭水化物なのか?

今回は、引き続き消化に良いもの、悪いものについてです。あと消化時間にもふれます。


前回の記事でまとめたように、一般的なイメージとして、

 

炭水化物・・・消化が良く、すぐに吸収される
タンパク質・脂質・・・消化に時間がかかり、体内の滞留時間が長い

 

という感じのものが多いですし、私も同様に思っていました。


他にも以前ある本(今から5年位前に出版されたものです)の中で、

あるサッカー選手(ゴールキーパー)が試合前、久しぶりのスタメン出場で極度の緊張状態にありました。
スタメン入りを告げられた前日から眠れず、食べ物も受け付けられないくらいだったそうです。
試合開始4時間前、いつものように軽食を取りに来たが、顔色も悪く、どうしたらいいかと管理栄養士が相談をうけました。

 

「うどんだけでも食べてほしい。他のおかず・フルーツは食べなくてもいいから」

 

と伝えました。
消化が良く、パフォーマンスも維持できるからと考えたようです。
でも、試合開始前のアップの時間(だいたい開始前60分前後からアップをします)中に戻してしまい、うどんの形がそのままに出てきたという出来事があったそうです。

その時の管理栄養士は、

  • もっとも消化の良いはずの食べ物が、約3時間たっても消化していなかった。
  • 相当のプレッシャー下にあったので、最初から身体が受け付けていなかった。
  • 多分、胃液も十分にでていなかったのではないか?

と考えたそうです。

この管理栄養士は当時、J1リーグで優勝争いをするくらいの常勝チームの専属栄養士でした。

それほどの方でも、同じ考え方をしているんだなと知る事が出来ました。
もちろん、当時の私も、「そういう事が起こるのか・・・」と、共感していました。

 

私は、糖質制限食についての書籍を読み漁っていますが、そのなかで、

 

「胸やけ(逆流性食道炎も含む)の原因は、糖質にある。糖質を摂取しなければ、薬も服用せず、劇的に治る。」

 

という感じの文章がありました。

それまで、胸やけは油(の消化不良)に原因があるのだとばかり思っていたので、すぐには信じられませんでした。
残念ながら、私は症状を持っていなかったので実践は出来なかったのですが、症例を聞く限りでは、とても有効な手段だと感じますし、いつか実践してみたいです。


それでは、本題に入りますが、ここでの消化は、胃内滞留時間の長短を意味するとして話していきたいと思います。


私の現在の考えは、

 

「タンパク質・脂質が消化が早く、炭水化物が遅い」
「時間で言うと、タンパク質は1時間も経過しないうちに胃を通過するが、炭水化物は4時間以上滞留する」

 

です。

今までのイメージとは、真逆ですね。

 

その理由として、胃内の消化酵素の存在です。

胃の中には、ご存知のように胃酸があります。
胃酸はpH2前後の強い酸性です。

それにより、食べた物は何でも溶かすというイメージがありました。
噂で鉄をも溶かすと聞いていましたが、出来ない事は無いレベルだそうです。

 

栄養を吸収しやすくために細かく分解していくという過程が必要なのですが、胃酸だけでは、あまり効率が良くありません。

 

その分解を助けるのが、消化酵素の存在です。

 

胃の中には2種類の消化酵素が存在します。

ペプシンと胃リパーゼです。

 

ペプシンは、タンパク質をポリペプチド・オリゴペプチドに分解します。
胃リパーゼは、トリアシルグリセロール(脂質)をジアシルグリセロールと脂肪酸に分解します。

分解されたタンパク質と脂質は、速やかに次の過程へ進むため、胃から小腸へと移動します。

 

では、炭水化物です。

 

炭水化物は、口腔内で咀嚼する(口の中で噛んでいる)間に、炭水化物に対しての消化酵素が働きます。
唾液アミラーゼといい、でんぷんが部分的に分解されます。
それにより、糖質が吸収されやすい形に変化し、胃を通過。
小腸へ流れて吸収されるため、血糖値が上昇するとういう流れになっていると考える。

 

炭水化物に対する消化酵素は、胃の中には存在しません。
ですので、ゆっくりと胃酸そのものが持つ能力だけで、小腸が吸収しやすくなるように、小さい状態になるよう溶かしていく。
そのため、胃の中の滞留時間が、必然的に長くなるという事になります。

 

ふと思いましたが、胃の中にずっと滞留しているため、なかなか溶かす事が出来ないものをより早く溶かすため、胃酸が大量に分泌されるのかもしれません。
それが出すぎて胃酸過多となり、胸やけや逆流性食道炎に繋がっているのではないかと感じます。

胃酸過多とは胃酸が必要以上に分泌される事により引き起こされ、胃痛や吐き気、ゲップ、胸焼け、食欲不振などが起こります。
一般的に考えられる主な胃酸過多の原因は、ストレス、喫煙、早食いなどが挙げられます。

この考え方だと、炭水化物が存在しない、またはごく少量であれば、胃酸も大量に必要とする事が無くなるので、症状が改善できると感じます。

最初の方で、「胸やけ(逆流性食道炎も含む)の原因は、糖質にある。糖質を摂取しなければ、薬も服用せず、劇的に治る。」という感じの文章があったと書きましたが、この考え方だと理解が出来ます。

また、前述した、プロサッカー選手も、3時間という時間でうどんを消化出来なかったのも、理解しやすくなると思います。

 

小さい頃から、「よく噛んで食べなさい」と言われていたが、これは炭水化物の絶対的な大きさを小さくし、より早く小腸へと移行しやすくするための手段にも繋がるのかなと感じます。
結果的には消化が良くなる(体の滞留時間が短くなる)事には変わりないので、良い事だと思います。


別件ですが、物をよく噛んで食べると、満腹感を得やすくなるというのは、万能ではないようです。
この件は、また後日に記事にしたいと思っています。


今回はここまでにします。

次回で、完結させたいと思います。