糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

身体を温めるのはトロミが最適?

ある番組で、免疫力を高めるには体温を上げるというような内容が流れていました。

確かにそうだよなぁと思いながら見ていると、身体を温める料理のコツという話をしだしました。

その時は、鍋がいいとか煮込み料理がいいという感じでしたが、大事なのは「トロミをつける事」と紹介していました。

共演者が質問していました。

「唐辛子のような香辛料はどうなんですか?」

紹介者は、「香辛料は汗をかくから、逆に体を冷やします。だからトロミをつける方が、身体の温かさが持続します。」

というような事を返していました。


ちょっと待てよ、と思いました。

香辛料を入れても入れなくても、トロミづけしたものでも熱々の料理なら食べると汗をかきます。
汗をかいた後にしっかりと拭き取ればいいだけの話です。
トロミ付けよりも、香辛料の方が身体を温める効果は得られやすいはずです。


その理由は、漢方(生薬)からの視点でも言えます。

身体を温める事で有名な生姜は「ショウキョウ」という名前で、唐辛子も漢方というよりも薬草という意味合いになりますが、発汗作用(皮膚刺激作用・健胃作用も)を促します。
同様の効果与えるとして、シナモン・ナツメグ・コショウも有名だと思います。

 

これらの特徴は、口に入れた瞬間身体に作用するほど、即効性に優れます。

本当に口に入れた瞬間です。

漢方薬は作用が緩やかとよく言われますが、西洋医学を基に作られた薬剤よりも即効性があります。
西洋医学を基とした薬剤は、効果がでるのに服用後30分前後かかりますが、漢方薬はすぐです。
極わずかでも生姜や唐辛子を口に入れた瞬間、舌や味覚を刺激し、体温上昇や血流促進を感じると思いますし、人によっては汗が滲んでくるでしょう。

それくらい効果を得られやすいです。

 

ではトロミ付けについてですが、昔はカタクリという植物の根っこから作っていましたが、現在ではジャガイモを原料にしています。

(理由は、カタクリの自生量が少なく、ジャガイモが大量栽培されるようになったためです。)

ジャガイモ(でんぷん)にはどんな効果があるかというと、民間療法で、胃潰瘍、十二指腸潰瘍にジャガイモの生の絞り汁を飲む方法が伝えられてきた程度です。
身体を温めるというのは知られていません。

 

トロミをつける事で、料理自体の保温持続時間は長くなると思います。
トロミで蓋をするようなものですから。

でも、食べたからと言って香辛料ほど体を温める効果があるか?というのは、はなはだ疑問です。

ここに少し厄介な所があり、こういった話をするのが料理研究家とかならまだいいのですが、今回はドクターでした。
テレビという媒体の中で、ドクターという社会的地位を持つ人物がそれが当然のように話をすれば、影響力が大きいのは言うまでもないです。

番組で紹介されていた内容は、免疫システムの話と免疫力を高める体操に多くの時間を割き、食事の話はかなり短かったです。

構成上仕方がない部分はあると思いますが、そういう短い時間だからこそ、誤解の生じにくい説明をしてほしかったなと感じます。

そのドクターの精神状態も影響しているのかもしれません。
テレビに出演する以上、緊張は避けられないでしょうから、通常とは異なると思います。
元々台本があったのか?質問の内容があらかじめ決められていたのか?突発的なものだったのか?によっても、大きく変化すると思います。
製作者側の、「早く進めろよ」という無言のプレッシャーもあったのかもしれません。

 

裏側の部分がどういうものか?私は知ることは出来ません。
そのドクターの本心であったとしても、誤解だったとしても、口に出した言葉が全てです。

私だったら、この質問に対してどう答えるか?

「トロミ付けしたものに香辛料を使うと、もっと発汗作用・血流促進作用が期待できます。汗が出てもそのままにしていたら身体を冷やす原因になるので、拭き取ったり着替えたりして身体を冷やさないよう気を付けて下さいね」

となると思います。

残念ながら、出演されたドクターはトロミ付けを推奨し、香辛料は逆効果という言い方(又はそのように感じ取れるような言い方)をされていました。

ドクターと言っても、漢方に対して良い印象を持っていない人もいると思いますし、食に興味のない人もいると思いますが、今回の件は、かなり違和感を感じるものでした。

私自身も情報伝達の際は、誤解の生じないように気をつけないといけないと改めて感じました。