糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

糖質制限食の一般論の負の部分に対する解答

前回の続きです。

 

ある文章の抜粋部分でしたが、恐らくこれが糖質制限食の一般的なマイナス部分として良く挙げられるのではないかとも感じます。

 

丁寧に答えていきたいので、前回から少し時間を空けました。

それでは、回答です。

 


糖質制限、糖質オフダイエット
など世間ではかなり出回りましたが、
みなさんも一度くらいは経験あるのではないでしょうか?
糖質、炭水化物を制限して、
肉、魚など好きなだけ食べる
簡単に言ってしまうとこんな感じのダイエットなのですが、」

 

 

糖質制限・糖質オフダイエット」と話を展開しているのに、なぜか「糖質・炭水化物を制限して」とあります。

細かい話ですが、糖質と炭水化物は別です。

 

炭水化物は、「糖質+食物繊維」です。

炭水化物を制限するとなると、食物繊維まで制限する事になります。
話を展開するうえで、しっかりと分けておかないとごちゃごちゃしてくるので、区別が必要です。

糖質制限・糖質オフというのは、その名の通り、「糖質のみ」を普段の食事より制限するものです。
炭水化物ではありません。
糖質制限食の定義は、糖質摂取量が1日130g以下の食事を指します。

 

誤解を与える言い方で簡単に言わないで欲しいです。

 

 


「糖質、炭水化物を制限して、
肉、魚など好きなだけ食べる
簡単に言ってしまうとこんな感じのダイエットなのですが、
「肉、魚は好きなだけ」なんて聞くと魅力的ですよね。」

 


好きなだけ食べていいという訳が無いです。
厚労省が示す標準的な摂取エネルギー量程度の摂取です。
性別や年代や活動量によっても変化しますが、2000~2300㎉前後だと思います。
それを無視して食べまくっていたら、簡単にオーバーカロリーとなり、痩せにくくなってしまいます。

 

 

 

「体重は減るけれど、続けていくと力が出ない
ふらふらする、集中力に欠けてしまう
などなどという声がありました。」

 

 

間違った糖質制限方法を行なっている結果です。
良くある間違いは、
糖質制限食のようなカロリー制限食」を行なっているから、フラフラする・集中力にかける・力が出ないという事になります。

食事のPFCバランスは、2:2:6の場合が多いですので、これを使います。
このバランスで糖質を控えようとすると、
2:2:4とか、2:2:2のような感じになります。
単純に、普段の食事から糖質であるご飯を減らしたり抜いたりするやり方です。

全体の摂取カロリーが不足しているので、当然エネルギー不足になります。

 

簡単に言えば、栄養失調初期状態のような感じです。

 

そんな勝手な思い込みによる食事制限を、「糖質制限は危険」とか、訳の分からない理論を振りかざさないで欲しいです。

糖質制限食で提唱されているPFCバランスは、「3:6:1」(私は4:5:1としていますが)と言われています。
糖質を減らしている分、しっかりとたんぱく質・脂質の量を増やさないと、コンディションが悪化するのは当然です。

 

 

糖質制限食の基準>
糖質制限をする。
②糖質を制限した分、脂質・蛋白質摂取を増やす。
厚生労働省のいう推定エネルギー必要量を摂取する。

 

 


「半年など短期的にみると、
体重に効果は表れるようですが、
一年以上になると、同じ結果になってしまうのだそうです。」

 

 

何を根拠に言っているのかよく分からないのです。

恐らくですが、この論文を参照にしたのかもしれません。

 

 

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イスラエルのShai先生の有名な論文、DIRECT
「低炭水化物食で体重減少・ HDL-C増加・HbA1c改善  RCT」

イスラエルの322人(男性86%)
(1)低脂肪食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
3グループの食事法を2年間
低炭水化物食が、最も体重減少。HDL-Cも増加。
36名の糖尿病患者においてHbA1cが有意差をもって改善

 


この実験でのグラフに関しては、


低炭水化物食群は、最初の2ヶ月は20g/日に糖質を制限、
その後3ヶ月目からは徐々に緩めて120g/日までOKと設定しています。
興味深いことは、「低炭水化物食群」は、カロリー制限なしの設定でしたが、
現実には「低脂肪食群」「地中海食群」と全く同様に摂取カロリーが減少しました。

つまり低炭水化物食群は、お腹一杯食べているのに摂取エネルギーが減少したのです。
これは、満足感・満腹感が大きかったので我慢することなく自然に減少したと考えられますので、
糖質制限食の大きな利点と言えます。

まとめるとDIRECTは、同一摂取エネルギーの3群を2年間フォローしたRCTであり、
結果として、「低炭水化物食群」が一番、体重減少効果があったということです。

 

 

低炭水化物食群では、カロリー無制限にも関わらず、体重は減少しています。
グラフが上昇しているのは、糖質量が最初の2カ月は20g/日であったのが、それ以降は少しずつ増やしていき、120g/日まで緩やかに上昇させました。
その緩やかな上昇のため、体重も上向きになった事がうかがえます。
しっかりとカロリーコントロールをしていても、一番もとの体重に戻っているのが、低脂肪ダイエットです。

 

それにしても、「1年以上は同じ結果」というのは、どんな根拠だったのか?

ぜひ教えて欲しいものです。

 

 

 

長くなりそうなので、次回に続きます。