糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

完全食についてのまとめ(第一部 完)

長く続けてきましたが、とりあえず今回で完結にしたいと思います。

 

完全食とは?

完全食の配合割合
ペットフードに関して
人間とペットの栄養バランスは同じでいいのか?
完全食の内容は基準によって変化する
必ずしも「現在の食文化=健康食=完全食」ではない(「現在の食文化≠完全食≠健康食」?)

 

という感じの内容で、話しを進めてきました。

最後です。

 

現状、市場に出回っている「完全食」は、リスクが高いのではないか?という事です。

この「完全食」は、加工された食品です。
粉末状になっているので、(だからという訳ではありませんが)製造過程でかなりの温度の加熱もされていると思います。
いくら、理想的に配合されたとしても、それは加工前の段階なので、結果として残っている栄養素は、どれだけなのか?と疑ってしまいます。

 

当然ですが、カロリー摂取のため炭水化物割合(糖質の割合)は高いです。
(利用者はシステムエンジニアプログラマーといった職業の人が多いようです。)
それを続けると、リスクが高まるのが糖尿病を含む生活習慣病
粉末を溶かして液状にして飲むので、吸収は早いと感じます。
でも、固形物を食べないという事で、消化機能自体が衰えていく可能性もあると思います。
(咀嚼筋や、胃の収縮をイメージしましたが、杞憂でしょうか?食欲があれば大丈夫なのは、人も動物も同じです。)

 

一時的というか、試しにという感じなら食べてもいいが、私はこれで日々を過ごすという食生活は送りたくないと感じます。
趣向としても、栄養価としてもです。

 

でも、非常食としてなら・・・とは思います。

 

東日本大震災をはじめ、被災された方々の救援物資として、菓子パンやおにぎりがふるまわれていました。
とはいえ、一日一回、一個だけという所からはじまり、それが一日二回になったが、内容は変わらず菓子パン・おにぎりがほとんどだったそうです。
そんな食生活を繰り返すため、糖尿病に罹患した人もいらっしゃいます。(他にも透析で治療を受けられない方、水分不足によりエコノミー症候群で亡くなる方も多くいらっしゃいました。)
そんな時にこれがあれば、状況は多少は変わっていたのかなと感じます。


完全食といって私が思いつくのは、卵です。
アミノ酸価が高いのはもちろん、ビタミンC以外の栄養素をほぼ兼ね備えている優れた食品です。

 

先日、スーパーに足を運んだ時の事ですが、両手に持った買い物かごに菓子パンだけを大量につめこんだ年配の方がいらっしゃいました。
その姿をみて、危機感を覚えました。
あくまでも想像ですが、もし、大量の安価なパンだけで日々を暮らしていたら、どうなってしまうだろうかと思ってしまいました。
(ひょっとしたら、施設利用者に配るために購入したのかもしれませんが)
もし違ったとしても、菓子パンや、半額になった弁当が日々の食事のメインになっている高齢者は、よく見かけます。
経済的な問題もあるのでしょうね。(あと、調理が出来ないという身体的な問題とか)

その部分は理解できるのですが、それを卵とプラスα(野菜)というように考え方を変える事ができれば、健康寿命を伸ばす事が出来るんじゃないかなと考えています。
(卵10玉約200円プラス野菜(キャベツ)2~300円前後で計500円として、一食当たり200円かからないかな?
菓子パン一個100円前後、弁当半額で2~300円前後?(地域差有り))

 

非常食としても優れています。
生卵としての長期保存は厳しいですが、加熱さえすれば、1か月以上前のものでも提供出来ますし、全卵液としても数か月(冷凍)保存できます。
アレルギーというリスクはありますが、栄養面は素晴らしいですね。
ちなみにその次は牛乳です。


最後にですが、今回、「完全食としてあげるなら」という仮定で、卵をあげました。
でも、私は現在に流通している「完全食」という考え方は、完成型ではなくまだまだ理想の段階(進化の途中)だとみてます。
医薬品でもないので成分の保証がない事と、完全食で用いられている栄養バランスが、健康的に過ごしていくうえでリスクが生じやすいという事が理由です。

一時しのぎであれば受け入れられるかもしれませんが、永続的続けるとなると、恐らく精神的に(肉体的にも)無理が生じます。

 

食品としてのニーズがあるように、こういう食生活を求める人は確かに存在します。
ですが、もともと人間の文化として、食卓を囲んで食事をするという習慣があります。

文化になったのも、大昔に生存のために集団生活をしだしたのが最初かもしれませんが、食卓を囲んで食事をするのが、幸福感・連帯感のようなプラスの感情を得やすいからだと思う訳です。

また、牛肉には脳内で幸福物質を生成するアナンダマイドのもととなるアラキドン酸を多く含んでおり、幸福感や高揚感が生まれやすいという性質もあるように、単にものを食べるという行為で得られるプラスの感情もあるわけです。

 

ひょっとしたら「完全食」として栄養を補給するという行為が、プラスの感情を伴ないにくいため、個人的には違和感を感じるのかもしれませんね。

 

まだまだ理想の段階だと思うので、もし現在がゴールなら、次第に廃れてしまう可能性はあると思います。
でも栄養的な部分と感情的な部分が補完できたら、この分野はますます伸びるのではないかと考えます。

 

新しい食文化の一つとして、ぜひ成長していって欲しいものです。