糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

食物繊維を摂取出来ればヘルシーなのか?

前回の続きです。
「野菜はヘルシー」というイメージがあると思いますが、それについて掘り下げているものになります。
私自身は「野菜を食べなくてもいいよ」という事を提言するつもりはありませんが、イメージ先行で過剰な印象を与えている部分があると思うので、その部分についての話をしているつもりではいますが、どうぞお付き合い下さいませ。
 
食物繊維ですが、なぜ食物繊維が多く含まれるほど「ヘルシー」となるのでしょうか?
 
人間には、もともと食物繊維を消化する事が出来ません。
そのため食物繊維を含む「炭水化物」は「たんぱく質」よりも消化に悪いという話をしてきました。
ただ、大腸で分解される事で「短鎖脂肪酸」を生み出します。
それが身体に必要なものであるので、これが「野菜を食べなくてもいい」という事を提言しない理由の一つです。
でも、短鎖脂肪酸はバターに多く含まれていたりするので代替食として摂取すれば、食物繊維を摂取しなくても大丈夫ではないかとも考えています。(要検証)
 
で、食物繊維の働きとしては、以下のように言われています
 

食物繊維は消化・吸収されずに、小腸を通って大腸まで達する食品成分です。便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。現在ではほとんどの日本人に不足している食品成分ですので、積極的に摂取することが勧められます。

 

ですが、この食物繊維の働きについて、私は「本当にそうなの?」と思ってしまう部分が多いです。
以前にも「食物繊維万能説」として、本当に「食物繊維が身体を健康にしてくれるのか?」という話をまとめた物を投稿しました。
では、順番に行きたいと思います。
まず、便秘の予防・整腸効果です。
整腸効果については良いと思うんですけど、「便秘の予防」になるんですか?と言いたい。
 
私が便秘治療として食事療法で最優先するのは「脂質摂取」と「マグネシウム摂取」です。
脂質を摂れば、過剰分が排便の内容に含まれるので、脂質が潤滑油となってスルリと排出されるという事と、マグネシウムが腸管内に水分を引き起こすので、硬くなったうんちも軟らかくしやすくなることに繋がるからです。
 
「食物繊維が便秘によい」と主張する人の論調は、以前は「食物繊維が便のかさを増し、それが押し出されるように刺激するから」という感じの空気銃やところてん製造機のようなイメージで話をしていたのですが、今は水溶性と脂溶性に別れていて、
 
水溶性食物繊維:便の中に溶け込み、便をやわらかくして腸内の通過をよくする
不溶性食物繊維:腸の蠕動を活発にして便を押し出す効果が期待できる
あとは「不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を2:1の割合でバランスよく摂れる食事しよう」という感じで主張しています。
さらに言うと「食物繊維が不足しても取り過ぎても便秘になります!」とか言っている所もあります。
 
これは本当ですか?と聞きたいです。
 
便秘という状態は、肛門(直腸)付近にあるにもかかわらず、硬くなって出にくくなっている状態も含まれると思いますし、私はこれが便秘だとイメージしています。
排便の意思があるけど、15分とか30分とかいきんでようやく出そうになるという感じの状態です。
 
仮に「便が最近出てない・・・」という状態の時に野菜をモリモリ食べたとします。
食物繊維が便の中に溶け込むだろうとは思うのですが、それは肛門という出口からかなり遠い所での作用です。
当然ですね。
胃から小腸を通ってきて、それが大腸に運ばれます。
出口が詰まっていて、長蛇の列の後ろ・最後尾に並ぶような感じですね。
出口付近は、ずっと渋滞を起こしていて「カッチカチ」になっていきます。
このカッチカチの部分を柔らかくするような事が出来る訳がないのです。
途中に列がいっぱい並んでいて、う回路等ないから途中を飛び越えて最前列に届くわけがないです。
そして不溶性食物繊維が便秘の状態で蠕動運動をしたとしても、出口付近はずっと渋滞している訳です。
押し出そうとしても出口部分の渋滞が解消できなければ、お腹が痛くなるだけですね。
あと、推進派の主張でズルいと思うのが、
便秘改善
便秘予防・防ぐ
便秘に効果的
便秘によい
便秘知らず
便秘解消
という感じで表現するのはいいのですが、結構その便秘と食物繊維の関連性をぼかしている所ですね。
 
「悪玉菌減らして善玉菌を増やすし、腸内環境が良くなるから便秘や下痢が起きにくくなるよね」
というような部分がベースにあるのかもしれません(憶測ですが)。
 
ちょっと話が飛びましたが、これが食物繊維が「今の便秘の症状」には何の効果も得られないのではないか?という根拠の部分の一つです。
 
では、医薬品ではどうか?という事になります。
 
便秘薬であったり処方薬・治療方法として最優先で「食物繊維」を勧める医者はほぼいないと思います。
生薬で「センナ」というものがありますが、「センナ」とか「センノシド」といった主成分の便秘薬を処方する所がほとんどであると思いますし、バリウムを飲んだ後でも渡されたりもします。
安価という部分もあるのかもしれませんが、第一優先としてはピンク色をした小さな錠剤を渡される事がほとんどだと思います。
 
食物繊維が便秘に効くのであれば、食物繊維主成分の医薬品を最優先で処方するのではないでしょうか?
 
ちなみにそういう医薬品は市販もされています。
私が見つけたのは2つ。
コーラックファイバー」と「ウィズワンエル」です。
共に「プランタゴ・オバタ種皮末」を含んでいて、これが「水分を吸収して便をふっくらさせる」としているのですが、前述したように、服用した時には便秘になっている訳で出口は塞がれて長蛇の行列が続いています。
この状態で服用して柔らかくする作用があったとしても、行列最後尾が柔らかくなったとしても、食物繊維が肛門というゴール付近(最前列)には行き届かないんですね。
便秘には食物繊維だと推奨する人達は、この部分の理論について触れている所が皆無のように思っています。
私が探しきれないだけかもしれませんが。
で、この2つの便秘薬に共通しているのが、「センノシド」を含むという事です。
結局、便秘薬で「排便」という部分に直接作用しているのは「センノシド」という「緩下剤成分」であり、食物繊維部分は肛門付近の最前列には作用してないじゃんという話です。
実際食物繊維が主成分のものが医薬品として存在している事は無く、健康食品であったり、介護時のトロミ成分になったりという様とで使用されているのが現状です。
 
健康食品はあくまでも「食品」です。
 
あと、
 

特定保健用食品で「おなかの調子を整える食品」として認められている成分の多くが食物繊維です。

 

という感じで「トクホ」という名前で健康アピールをしていますが、これも付加価値をつけただけの「食品」です。
効能を明記できないので「便秘改善」とかではなく「お腹の調子を整える」というよくわからない「整腸」作用をぼかした表現になっています。
食品なので、医薬品のような効能は得られないです。

以上の事から、わたしには「なぜ便秘解消に食物繊維をぶっこんでくるのだろうか?」と感じ、便秘改善に関しては意味がないものとしか映らないのです。
でも、世の中では「食物繊維不足=便秘」という考え方が根強いです。
私にとっては不思議でなりません。
そもそも「食物繊維が不足する事で便秘になる」と表現する根拠が分かりません。
食物繊維が不足した状態というのは何グラム以下なのか?それが何日続いたら「食物繊維不足による便秘」と診断されるのでしょうか?
そんな決まり・診断基準は聞いた事が無いので、主張するのであれば教えて欲しいです。
 
出口部分でカッチカチになった状態(これを便秘だという事を前提に話してます)を解消するのは「マグネシウム」と、あとは「浣腸」(と上記のような便秘薬)かなと考えます。

一つだけで、だいぶ尺を使ってしまいました。
次回は血糖値やらコレステロールの話をしたいと思います。