糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

豚肉が身体を冷やさない理由と食べ合わせについての結論

基本的に、人はモノを食べて生命維持をしています。
その食べるものによって成長・健康度合いは当然変わってきますが、それは置いておきます。
もう一つ、基本的な事として「モノを食べると身体は温まる」というものがあります。
食事誘発性熱産生 (DIT)という言葉をご存知でしょうか?
食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます。
このため食事をした後は、安静にしていても代謝量が増えます。
この代謝の増加を食事誘発性熱産生(DIT: Diet Induced Thermogenesis)または特異動的作用(SDA: Specific Dynamic Action)といいます。

食事誘発性熱産生でどれくらいエネルギーを消費するかは栄養素の種類によって異なります。
たんぱく質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%で、通常の食事はこれらの混合なので約10%程度になります。
食事をした後、身体が暖かくなるのはこの食事誘発性熱産生によるものです。
加齢や運動不足で筋肉が衰えると、基礎代謝が低下するだけでなく食事誘発性熱産生も低下します。
逆にトレーニングで筋肉を増やすと食事誘発性熱産生は高くなるとされています。
また食事の摂り方としてよく噛まずに飲み込んだり、流動食だけを摂る場合に比べると、よく噛んで食べる方が食事誘発性熱産生は高くなるといわれています。

 

食事誘発性熱産生 / DIT | e-ヘルスネット 情報提供

 

タンパク質・糖質・脂質という分類をしていますが、
・タンパク質 エネルギーの約30%
・糖質    エネルギーの約6%
・脂質    エネルギーの約4%
という事なので、通常の食事(PFCバランスが2:2:6)であれば、約10%程度になるそうなのですが、たんぱく質である豚肉を食べれば、エネルギーの約30%が熱になるわけです。
このような身体の仕組み・生理作用があるにもかかわらず、たんぱく質を食べても身体を冷やす・体温を下げるとするのは、おかしな話なのです。
前回の投稿で「赤身を食べると体温が上がり、脂身を食べると体温を下げる」という表現がどっかのサイトにありましたが、いずれにしても体温は上昇するが、その度合いが7倍くらい差があるため、下げるように感じるが、脂身を食べても、上記の理由から体温は上昇する訳です。
 
 
また、人は暑い時には涼を求め、寒い時には暖を求めます。
これは当然です。
心地良い温度を求めますから。
そのため、暑い時には冷たいものが食べたくなります。
 
夏野菜ですが、トマト・ナス・オクラ・きゅうり・ゴーヤー、キャベツ・レタス・ししとう・生姜・ニンニク、ピーマン。
こういったものが夏に旬を迎えて食べる事が出来るのですが、これらは全て身体を冷やすのでしょうか?
生姜やニンニクは身体を温めますし、血行促進として医薬品の成分にもなっています。
唐辛子もカプサイシンとして温シップに含まれてもいます。
 
暑い日に温かいものを食べるよりは冷たいものを食べたいと思うのが当然です。
涼を求めますから。
ですので、夏野菜を温かく食べるよりは、冷たく冷やしても美味しく食べれる習慣・文化が生まれただけではないのでしょうか?と考える訳です。
 
逆に、冬野菜は糖質の多い根菜が多いです。
里芋・キャベツ・大根・ゴボウ・ニンジン・レンコン・大根・カブ。
他には小松菜・青梗菜・ネギ・白菜・ブロッコリー・ほうれん草といった葉物野菜もあります。
これらの食品で、葉物野菜はともかく、根菜は基本、生では食べません。
大根はサラダとかもありますが、基本は炒めたり煮たりと熱を加えて調理をしますが、温かい状態で食べる事が多くなると思います。
暖を求めますから。
ですので、冬野菜を冷たく食べるよりは、温かくして暖をとれるように美味しく食べれる習慣・文化が生まれただけではないか?と考える訳です。
里芋の煮物を、冷たくして食べて美味しいでしょうか?
美味しくないです。
理由は、食感もそうですが、糖を多く含んでいます。
熱を加えている方が、ふっくら・ほっこりするため、旨味・甘味を感じやすくなるからです。
冷めた筑前煮も有りだと思いますが、温かい方が美味しく感じます。
冬に冷たいサラダを食べるよりは、温かくした温サラダにする機会が多いのではないでしょうか?
冬に冷たいそうめんを食べず、温かいにゅう麺にして食べたりするのではないでしょうか?
ざるそばを夏に食べ、かけそばを冬に食べる頻度が高いのではないでしょうか?
トマトも冷たく冷やしてサラダで食べても美味しいですし、ソースを加熱してピザのように食べても美味しいです。
トマト鍋というのも最近は出てきています。
トマト鍋を食べたら身体は冷えるのでしょうか?
あんなにアツアツにして食べているというのにです。
という事です。
 

食性を科学的に調べるため、女子栄養大学と北里研究所が共同で行った実験をご紹介します。
温性の食品を食べると・・・
血液循環がよくなって体があたたまる
まず健康な女子大学生8人(20.6±0.7歳)に、体を温めるとされる温性の食事(1812kcal/日・温性食品の重量比53±13%)を5日間とってもらいました。
この食事は、もち米、あじ、鶏肉、しょうがなど温性の食品の割合が、ふだんの食事の約3倍になっています。
その結果、温性の食品を食べたあとは、安静時の体表温度が高くなることがわかりました。
いったん冷えても体表温度が回復しやすい
次に冷水に手を30秒間つけて、そのあとの体表温度の変化を比較しました。
すると、温性の食品を食べた人は、冷水に手をつけたあとの体表温度の回復率が高くなることもわかりました(グラフ参照)。
以上のことから、温性の食品を食べると、体が温まるだけでなく、いったん冷えても、体温が回復しやすくなることが確かめられたのです。

 

www.terumo-taion.jp

 このサイトは、以前にも引用したのですが、実験で、冷水につけて冷やした体温が、どのように上昇するか?の実験をしたものですが、確かに、音声の食事をする事で、温度が上昇しているという結果になっています。

で、私が気になるのは、どうして温性の食事だけを検証しているのか?という部分です。

身体を温めるのであれば、勿論検証は必要ですが、逆に身体を冷やすとする食べ物を食べた時は、どのように変化するのか?を検証しないと、「温性の食事をすれば身体が温まる」ではなく、「食事をすれば身体が温まる」という検証になっているだけだからです。

温性・冷性という話をしてきているにも関わらず、

 

「冷性の時とはこんなに改善具合が違うから、やっぱり寒い時には温性の食事だよね?」

 

という比較検証をしないのは疑問です。

都合の悪い結果が出たからなのでしょうか?

不思議でなりません。

 
私自身は、 
「身体を冷やす・温めるというのは、どのような食材を、どのような調理方法で食べているのか?」
という事で決まるのではないかと考えています。
 
結論としては、このような食べ合わせをワーワー言った所で、そこまで影響を与えるものではないという事を言いたいです。
好きに食べればいいと思います。
 
 
以上です。
 
このシリーズは、ここまでにしておきます。
書きたくなったら、また追記します。