糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

きゅうりとトマトの組み合わせは良くないと言い出しているのをみました

サラダの定番の組み合わせの一つである「きゅうりとトマト」ですが、これが良くないと言い出している所がありました。
 
8月5日放送の『スクール革命!』(日本テレビ)では、“食べ物2択クイズ! 良いのはどっち?”と銘打った企画を放送。
アセロラのビタミンC含有量はレモンの約17倍」「食事で最初に食べるなら、野菜ではなく肉がよい」など、食に関する数々の豆知識が披露されました。
中でも多くの出演者を驚かせたのが、「きゅうりとトマトは食べ合わせが悪い」という新常識。
SNSでも、「サラダってたいてい両方入ってるじゃん!」「ベストフレンドといっても過言ではないのに…」「いやいや一緒に食べたいでしょ」といった動揺の声が。
医学博士の森田豊先生によると、きゅうりに含まれる「アスコルビナーゼ」という成分は、トマトのビタミンCを破壊してしまう恐れがあるそうです。
一緒に食べたい時は、「アスコルビナーゼ」の働きを抑える酢が入ったドレッシングをかけて食べましょう。

 

という事のようです。
恐らく去年(2018年)のものではないかと思いますが、それはどうでも良いです。
 
これを見て一番最初に思ったのが、数値データが無く、印象・インパクトだけが前面に出ているコメントであるという事です。
 
・きゅうりのビタミンC破壊能力と、トマトのビタミンC量は、どこで均等となるのか?
 
・きゅうりにはどれくらいの酵素があって、どれくらいのビタミンCを破壊する
のか?
 
・破壊してしまう「恐れがある」という事だが、どれくらいの基準を超えると「恐れ」が生じるのか?
 
・きゅうりとトマトの組み合わせ限定なのか?
 
ここら辺が、パッと思い浮かびました。
きゅうりには「アスコルビナーゼ」という酵素があります。
実際にビタミンCを破壊(?)するのかもしれませんが、作用は無限ではないはずです。
酵素も、何かと結びついて活性化していくのですが、その「何か(補酵素)」が無いと、働きは生まれません。
つまり有限の効果です。
例えはおかしいかもしれませんが、金属を溶かす事で有名な硫酸でさえ、たった1滴の硫酸で何十キロもの金属を溶かす事が出来ないのと同じ理由です。
とりあえず調べていたら、ある実験結果がありました。
・VC 総量にほとんど変化がみられないことから、VC は破壊されていないと考えられる。
・ほとんどの VC が酸化されていることから、アスコルビナーゼには VC を酸化する作用があると考え
られる。
・基準と比べると、0.05g でも働いていることから、少量でも働くということが分かる。
・キュウリの輪切り1枚は1枚約1g なので、キュウリの輪切り2.6枚で、トマト一つ分の VC(約20mg)
を完全に酸化することができると考えられる。
・50度から60度の間で大きな変化があることから、その温度の間で活性が抑えられていると考えられる。
・70度以降 VC がほとんど酸化されていないことから、70度以降アスコルビナーゼがほとんど働いてい
ないと考えられる。
・塩基は VC を破壊するということが分かる。
・pH3~4、pH12~13では VC がほとんど酸化されていないことから、pH7から離れた pH ではアスコ
ルビナーゼの活性が抑えられていると考えられる。
・逆に、pH7に近い pH では、アスコルビナーゼの働きをほぼ抑制していないと考えられる。

 

こんな感じの考察をされていましたが、着目点は

「キュウリの輪切り2.6枚で、トマト一つ分(約133g)の VC(約20mg)を完全に酸化することができると考えられる」

 

の部分です。
こういった事から、コメントを発したのだと思います。
また、酸に弱いので、酢の物やドレッシングという様な考えもあるのだと感じます。
恐らくですけど、他の野菜のビタミンCにも影響を与えると感じます。
 
この事実だけを見ればです。
答えはウィキペディアにまとめられていました。
 

またキュウリにはビタミンCを酸化させる酵素アスコルビナーゼ)が含まれているため、キュウリを食べるとビタミンCが破壊されると言われているが、実際は酵素作用によって還元型ビタミンCから酸化型ビタミンCに変異されるだけである。
一方で、酸化型に変わったビタミンCでも体内で還元型に戻るという可逆的性質を持っているため、今日では生理作用も還元型と同等であるとされている。
キュウリを食することでビタミンCが破壊されると言われた理由として、過去にはビタミンCは還元型だけに生理作用があると考えられており、酵素によって酸化型に変化したビタミンCには生理作用はないものと考えられていたことがあげられる。
そのため酸化型ビタミンCはビタミンCとしてカウントされておらず、ビタミンC量が減少したように見えたという背景がある。
しかしながら前述の通り、酸化型ビタミンCであっても体内で還元型に戻るため現在では還元型と酸化型を合わせた総ビタミンC量を記述することが一般的である。

 

という事で、酸化しようがしてまいが、ビタミンCはビタミンCとして作用すると考えるのが主流のようです。
 
また、酸の強いものと食べると良いいう主張があるのですが、人間は強酸を出す事が出来ます。
穀物酢のpHは「2~3」です。
胃酸は「1」です。
酢をかけてもかけなくても、胃酸の強酸性だけでアスコルビナーゼの反応は起こらないのではないでしょうか?
穀物酢の酸度は4~5%程度です。
かけても「ドレッシングとして」15~20ml程度(適当です)と思いますが、その程度の酸で反応を防ぐことが出来るのでしょうか?
 
無理でしょう。
 
これまでの内容が「医学博士がインパクト重視のコメントを残した」とする理由です。
 
・きゅうりとトマトを食べても、栄養学的に問題はない
・酢をかけてもかけなくても、胃酸が働き
アスコルビナーゼの活性が抑えられている
 
というのが、当ブログでの結論です。
好きに食べたら良いと思います。
 
次は、ネギとわかめの組み合わせの話でもしましょうかね。