糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

糖質(砂糖)の依存症について、もう少し詳しく

前回の続きで、糖質(砂糖と言わず、以下、糖質に置き換えます)がもつ依存性についてです。

 

糖質もたんぱく質も、摂取する事で体内のドーパミンを増加させる事は出来ます。

ですが、糖質には強い依存性(依存症)が伴うという事が分かっています。

 

その違いは何かと考えてみましたが、厳密に言うと違うのだろうと思いますが、イメージとして

たんぱく質は、材料を与えて作り出すもの」

「糖質は、あるものから引き出すもの」

の違いでは無いかと考えます。

 

以前までに書いてきましたが、たんぱく質には多くの必須アミノ酸を含んでいます。

体内では作る事が出来ないため、「必須」の文字が付いているのですが、ドーパミンを作り出すためにチロシンが必要ですが、そのチロシンの材料となるのが、必須アミノ酸である「フェニルアラニン」です。

 

何度も言いますが、これらはアミノ酸であり、たんぱく質です。

たんぱく質を多く摂取する事で、必要な量のドーパミンを作り出す事が出来ます。

 

ですが、糖質は少し異なります。

糖質を摂取すると、「脳内報酬系」を刺激していきます。


脳内報酬系は、人や動物の脳において欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化し、その個体に快感の感覚を与える神経系です。

脳の腹側被蓋野から側坐核および前頭前野などに投射されているA10神経系(中脳皮質ドーパミン作動性神経系)と呼ばれる神経系が脳の快楽を誘導する「脳内報酬系」の経路として知られています。


ラットの実験で、この神経系に電極を埋め込んで電気刺激をするとラットは盛んにレバーを押して電気刺激を求めたことから、この神経系が活性化すると快感を感じることが発見されました。
A10神経系で主要な役割を果たす神経伝達物質ドーパミンです。ドーパミンアミノ酸チロシンから作られるアミンの一種で、人間の脳機能を活発化させ、快感を作り出し、意欲的な活動を作り出す神経伝達物質です。
A10神経系が刺激されると、ドーパミンが放出され、脳内に心地良い感情が生ずると考えられています。
このシステムは、正常な快感とともに、麻薬や覚せい剤のような薬物による快感や、そのような薬物への依存の形成にも関わることが知られています。
脳内報酬系においてドーパミン放出を促進し快感を生じると、それが条件付け刺激になって依存症や中毒という状態になります。
コカインのような覚せい剤モルヒネなどの麻薬のように依存性をもつ物質は、ドーパミン神経系(脳内報酬系)を賦活します。


このような依存性のある薬物は連用すると、同じ量を摂取しても快感の度合いが次第に小さくなります。
そのため、快感を得るためにさらに摂取量を増やすようになります。
さらに、その薬物が入ってこなくなると、ドーパミン神経系が低下し、不安症状やイライラ感などの不快な気分が生じます。
これが禁断症状(離脱症状)です。
このように、脳内報酬系を活性化して依存性になる薬物では、次第に摂取量が増えることや離脱症状の存在、その薬物の摂取を渇望することなどが特徴です。

 

糖質も甘味も薬物依存と同じ作用をすることが動物実験などで明らかになっています。
快感を求めて甘味や糖質の摂取を求め、次第に摂取量が増え、摂取しないとイライラなどの禁断症状が出てきます。
ラットの実験で、コカインよりも甘味の方がより脳内報酬系を刺激するという結果が報告されています。つまり、甘味はコカインよりも中毒(依存性)になりやすいという実験結果です。
砂糖の多い食品や飲料の過剰摂取は甘味による快感によって引き起こされ、これは薬物依存との共通性が指摘されています。
そこで、甘味による依存性(甘味中毒)と薬物に対する依存性(薬物中毒)のどちらが強いかを比較する目的で実験が行われています。


といった感じのものを抜粋しておきます。

 

簡単に言うと、

・糖質を摂り続けると、「快感」のような「脳内報酬系」が活発になる
・同じ量を摂っていると、だんだん「快感」を得られにくくなる
・より多くの糖質を摂る様な要求が強くなる
・その要求は、コカイン(薬物)よりも強いものになる

これが繰り返され、糖質摂取が止められなくなる「依存症」へとつながるという事です。

 

この作用は、たんぱく質の時と違って、現状から「ドーパミン」を引き出すからであると考えています。

たんぱく質は、現状にドーパミンを生み出すのに必要な材料を与える事で、その過剰分(プラス)が多くなるほど快感を引き出すように作用します。

その過剰分が無くなると、通常の状態に戻るという事です。

 

ですが、糖質は、現状から強引にドーパミンを引き出します。

そのため、現状から不足状態(マイナス)になっていきます。

それをしっかりと補って現状に持っていければまだ良いと思いますが、糖質を日常的に摂取するとします。

すると、現状(正常な状態)から不足状態が続き、さらに引き出されるように働くと、枯渇していきます。

その枯渇した状態からさらに引き出そうとするため、今まで以上の糖質を摂取して快楽を得ようとします。

それが繰り返され、「日常 → 常習 → 依存(中毒)」へと繋がっていくわけです。

 

この作用は、依存症と言われるものに見られる作用の順番であると考えています。

経口摂取による依存症には、例えば酒(アルコール中毒)、タバコ(ニコチン中毒)、コーヒー(カフェイン中毒)、薬物中毒、少し色が変わりますが、鉛中毒・重金属中毒といったものがあります。


その変化の速さが、「糖質はコカインよりも早い(強い)」という研究結果として発表されています。


そのため反対派は、糖質の過剰摂取は良くないと警鐘を鳴らしている訳です。


続きます。