糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

野菜摂取量について考えてみた

前回の続きで、野菜摂取量目安である「350g」というのは、どういう理由なのかについての話をしていきます。


某サイトから抜粋します。


肥満や生活習慣病を予防するためには、適度な運動なども重要ですが、食生活も大きく影響しています。
第二次世界大戦後、日本人の食生活は欧米化し、タンパク質や脂質の摂取量は増加し、炭水化物や野菜の摂取量は減少するなどの変化が見られています。近年、生活習慣病が増加しているのは、栄養バランスの偏りが一因だと考えられています。

なぜ野菜を350g食べた方がよいのか?
野菜はなぜ積極的にとるとよいのでしょうか。

・野菜の摂取量を増やすことで満腹感が得られ、野菜はカロリーが低いため、肥満や糖尿病の予防に役立つ
生活習慣病脳卒中、高血圧、がんを予防には、カリウム、食物繊維、抗酸化ビタミン類、各種のファイトケミカル等が役立つと考えられ、野菜はこうした成分を含んでいる
高齢者の寝たきりを防ぐためには骨粗鬆症を予防するためカルシウムを十分摂取することが必要で、野菜にはカルシウムも含まれる

このように、野菜の摂取量を増加させることで、肥満を予防し、カリウム、食物繊維、抗酸化成分、各種ファイトケミカル、カルシウムなどを摂取できることで、生活習慣病の予防に役立つと考えられています。

では「350g」とは、どこから出てきた数字なのでしょうか。

1995年~1997年の国民栄養調査から20歳以上の男女(32,038 名)のデータを元に「栄養素摂取量と食品摂取量等との関連について」分析が行われました。
その中で、カリウム、ビタミンC、食物繊維の摂取量の関係を検討し、それぞれの栄養素について目標量を十分摂取するためには、野菜がどれくらい必要なのかを分析した結果、必要量として野菜は350gが求められています。
(厚生労働省のサイトに健康日本21策定に関する「栄養・食生活」の参考資料1 「栄養素摂取量と食品摂取量等との関連について」より)


という事により決められたようです。

ちなみにファイトケミカルについては、注目されるのが2015年前後くらい?だったと思われます。(正確ではありません)
ですが、350gの目安を発表したのは平成9年1997年であり、後付けの内容と考えるので、横に置いておきます。

 

前回記入してませんでしたが、野菜の350g以外に、果物を200g以上という事も目安にあげられていますが、糖質制限ではこんなにとる事は出来ません。

リンゴなら一日半個くらいが目安摂取量です。

基本的にたんぱく源から取れないビタミンは野菜で摂ることになります。

 

そして今回は、「カリウム」について話をしていきたいと思います。

カリウムは、野菜・果物に含まれる水溶性の栄養素です。

それを取り入れる事で、体内のナトリウム・カリウムバランスを整えてくれ、一般的には塩分調節というような事で有名な栄養素であると思います。

体内でナトリウムが過剰にならないように、カリウムを摂取して余分なナトリウムを排出させ、血圧上昇を防ごうというような事です。

 

それで、ここからが本題に入るのですが、野菜を350g食べるというのは、結構大変に感じる人がいると思います。

よく提案されているのが、

 

・現在は平均300gくらい摂っているので、一皿野菜の副菜を増やしましょう
・ゆでたり、火を通すと野菜の「かさ」が減るので、取りやすくなります
・主菜のお肉や魚などの動物性タンパク質の量をたっぷりと摂りすぎることで、後一皿のおかずやごはんの量が少なくなりがちなので、一汁三菜のバランスがとりにくいという方は、主菜の量を加減する

 

という感じです。
最後の例は、たんぱく源を減らしてでも野菜を食えというような内容であり、これには異を唱えたいのですが、ちょっと置いておきます。

 

さて、野菜のかさを減らすという事ですが、確かに火を通すと、水分も抜けたりするので小さくなります。
そのため食べやすいというのは起こるのですが、ちょっと待ってください。

 

カリウムという栄養素は、とても水に溶けやすい成分です。

 

例えば、包丁で切った時に断面が出来ますが、そこに水が触れたり、放置しておいたりすると、どんどん水分(カリウムも当然含まれます)が流れ出ていきます。

調理法として、ボイルを選択するとします。

仮に、お浸しを作るとします。

ボイルをして水にさらし、水分を絞って調味液につけたり、そのまま出したりすると思いますが、絞る時にかなりの栄養素も抜けていきます。
絞った水が緑色になっていると思いますが、その時に栄養素も当然流れていっています。

仮に、きゅうりを塩もみするとします。

塩の浸透圧により細胞壁が壊れ、水分と栄養素が抜けていきます。
その後、水で塩気を抜き、水っぽくならないようにガッツリと絞ります。
当然、栄養素も抜けてしまい、きゅうりの風味と食感だけが残る事になります。

 

こういった事に触れていないんですね。

 

栄養を摂る事をメインに置くなら、スープや野菜サラダが一番です。
スープなら流れ出た栄養素も取り入れる事が出来るし、野菜サラダも加熱によるビタミンの破壊・損失も起きにくいからです。

 

 

カサを減らすという表現は、情報提供側からすると使いやすい方法論の一つなのですが、少し目的が変わってきています。


栄養を必要量取る事が目的ではなく、

「350g野菜を食べるためにはどうすればいいのか?」

という事が目的に変わってきているのです。


市販されている野菜ジュースにも触れていきます。

良く宣伝文句で、「一日分の半分の野菜がとれる」というようなものもありますが、これが顕著に表されています。

あくまでも野菜の重量から計算されていて、中身の栄養素は、完成された商品から抽出されたものではなく、それを作るために必要とした野菜の量から逆算されて表示がされています。

一日の半分という事なら、175gです。
製造するにあたって、一本当たり175gの野菜を使ったから表記しています。
製造の過程で、還元濃縮でガンガン加熱されて水分をとばされます。
水分を飛ばした方が、輸送コストが抑えられるからです。
その後工場で再度水分を加えられてから商品化されていきます。
そんなものに、生野菜175g分の栄養素がそのまま含まれている訳がありません。

「350gの野菜をとる事」の目的がズレてきているように感じて仕方が無いです。

 

もちろん、野菜のバリエーションが増える事で、献立にも変化が生まれ、楽しい食事に繋がる事は理解できています。

ですので、葉野菜だけで良いという話をしているつもりは無いです。

ただ、目的はそれだけの量に含まれるであろう栄養素をしっかりと取る事です。

それをはき違えないようにしてほしいと思って、文章にしてみました。


この内容は、もう少し続けます。