糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

たまには栄養学の専門用語を多用してみる

前回の続きです。

 

身体に60兆個存在すると言われる細胞一つ一つに栄養・酸素を供給するためには、血液と、それに含まれる成分(供給能力)により、大きく左右されるという感じの話をしてましたが、その続きです。

 

血液の栄養状態で、糖の割合が大きい(高血糖)と、ミトコンドリアは糖をエネルギーにして活動し、糖の割合が少ない(正常値)と、脂質をエネルギーにして活動するという事です。

人間は、ATP(細胞が働くためにとても効率良くエネルギーを供給してくれるもの)を生み出し、生命を維持していく働きをしています。

 

3大栄養素の話になりますが、この中で人間のエネルギー源として使われているのは、「糖」と「脂質」です。(注:炭水化物とは表記しません。炭水化物は「糖と食物繊維の総称」であり、エネルギーとなるのは大部分が糖だからです)

糖がエネルギーの主体であれば「解糖系」で、脂質がエネルギーの主体であれば「糖新生」で、エネルギー(アセチルCoA)を生み出します。

 

この「糖新生」の過程で、生み出されるのが、「NAD」という訳です。

(もっと言うと、ミトコンドリア内でオキサロ酢酸とリンゴ酸の変化の過程でNADが生まれます)

これは、解糖系では見られない作用です。

このエネルギー利用の仕方により、NADの放出量が変化し、NADが増えれば増える程サーチュイン遺伝子が活性化するという訳です。

これにより、

 

サーチュイン遺伝子の活性化
NADが増えると、サーチュイン遺伝子が活性化し、サーチュインと呼ばれるたんぱく質ヒストン脱アセチル化酵素)が作られる

 

へと繋がるわけです。

 

という事で、エネルギー利用の方法を、ほとんどの日本人が解糖系により生み出されている生活をしているのですが、それを糖新生のエネルギー代謝に変える事が出来れば、サーチュイン遺伝子は活性化していくという訳です。


食事によって血糖値が十分に確保できると、解糖系が常に働き、糖新生は働きにくくなります。

糖新生が優位に働くためには、食事による血糖値上昇を防ぐ必要があります。

エネルギー消費の優先順位は、「糖質 > 脂質」ですから。

食事による糖の摂取が十分でないと、ようやく脂質(脂肪)をエネルギーとして消費し始めます。

糖新生が優位になっていくと、同時に脂肪酸のβ酸化も行われ、脂肪・アミノ酸の分解が活発になるのですが、これにより、「筋肉量が減る!!」と主張する人がいます。

アミノ酸が必要なので、「体内の筋肉が消費されて基礎代謝が減っていく!!」という内容なのですが、それはまた別の話にします。

 


話を戻しますが、食事による糖質摂取が少ないと、糖新生が優位になります。

その食事として例に出しやすいのが、糖質制限食であったり、MEC食であったり、地中海式食事法であったりすると思います。

 

サーチュイン遺伝子が活発化するためには、

「飢餓状態を作りだす」「空腹感を持続する」事ではなく、

「血糖値を上昇させるような食事をしない」という事に繋がる

 

と、確信に近い仮説を立ててみます。


ただ現実的には、サーチュイン遺伝子についての研究は完全には解明出来ていないようです。

ですが、このような記載を見つけました。


カロリーを制限するとサーチュイン遺伝子が関連して長生きになる、との論文も出てきています。
人でもカロリー制限をすると体の中で炎症マーカーが低下して、この減少はサーチュイン遺伝子の活性化によるものと考えられています(Biochim Biophys Acta 2013; 1830: 4820-4827)。
症例数が少ない、調査期間が短いとの指摘もありますが、SIRT1遺伝子の研究は多くの方の望む健康で長生きを可能にするかもしれません。


カロリー制限をすると炎症マーカーが低下するため、長生きできる可能性が高くなるという感じです。

炎症マーカーは、簡単に言うと、「体内で炎症が起きている程度・度合い」という感じでしょうか?

食事により炎症が起きるリスクが高いのは糖質なのですが、カロリー制限すると結果的には総糖質摂取量が減るからそうなるという事でしょうか?

 

あと、ここまで書いておいてなんですが、レスベラトールは特に影響を与えないようです。

レスベラトールが長寿の秘訣とされていました。
理屈的にはレスベラトールが長寿位電子のスイッチをオンにする的に解釈されていました。
残念ながらその後の研究でレスベラトールと長寿との関連は薄い、という研究結果が出ています

という事なので、そういった健康食品があったとしても、気にしないようにしてください。

 

まだまだ続きますよ。