ラットの実験と糖質制限とプロパガンダ
食物繊維の話の途中ですが、別の話をします。
先日、ある記事が公開されました。
糖質制限ダイエットは老後にしわ寄せも──。
ご飯やうどんなどの炭水化物を減らした食事を長期間続けると、高齢になってから老化が早く進み、寿命も短くなるとの研究を東北大学大学院がまとめた。
糖質制限は「内臓脂肪を効率的に減らす」と話題になっているが、マウスを使った試験では人間の年齢で60代後半からの老化が顕著だった。
研究内容は名古屋市で15日から始まる日本農芸化学会で、17日に発表する。
皆さんは、この記事を見てどう思うでしょうか?
「やっぱり、糖質制限って危険なんだな」
「コメって大事なんだな」
と思うでしょうか?
私はというと、
「これって、兎に卵を食べさせて、コレステロール値が急上昇したっていうのと同じやつじゃね?」
でした。
私は、色んな人の主張を見ていて、根底部分を確認しながらチェックを入れています。
「あなたは、どの立場から何を言いたくて、その話をしているのですか?」というような部分を意識しています。
そうでなければ、簡単に印象操作で、事実が捻じ曲げられてしまうからです。
今回、私がこの記事でチェックしたのは、どこの団体・グループがこの意見を肯定・批判しているかです。
新聞だったら、朝日新聞か、毎日新聞か、産経新聞の記事かをチェックするようなイメージです。
最初の2紙なら、「あっ・・・」と思いますが、それは置いておきます。
この記事は、明らかに「糖質制限をすると、老化が早まる」というもので、糖質制限を肯定する人にとってはネガティブなイメージを与えます。
この記事の中で、しっかりとコメを食べようと主張しているグループはどこでしょうか?
JA全農
ルネサンス(スポーツクラブ運営)
ミノーレ(JA全農運営)
が、記事に登場します。
この記事は、「日本農業新聞」という所が発表しています。
また、日本農芸化学会というものが毎年開催されているようですが、この学会は元文科省が運営していました。
全てがコメの消費量を上げる事で、自分達にとって都合の良い事が起きる可能性が高い団体です。
ここまでだけで私は、「あっ・・・」(察し)、と思いましたが、話しを進めていきます。
次にチェックしたのは、「そもそもマウスって、何を主食にしてるんだ?」という事です。
マウスは、多くの実験で利用されます。
基本的には、薬物の作用や毒性を研究目的として、動物実験が行われています。
ただ、この時のエサは、恐らく通常に与えられているものでしょう。
ネズミ駆除のサイトでは、
「好きな食べ物 魚肉ソーセージ、チーズ、油揚げ、サツマイモ、などが一般的で、カゴトラップのエサに使われます。」
とあります。
もっと調べてみると、基本的には雑食ですが、穀物・種子類・昆虫・野菜。種類によっては魚介類・肉類を好むものもいるようです。
まとめてみると、穀物が中心で、ある程度のたんぱく質と、低脂質が食習慣のようです。
通販サイトでネズミのエサの成分を調べてみると、成長期のラットの主食として、一番ポピュラーで手軽なもので、
粗タンパク質23.0%以上
粗脂肪3.0%以上
粗繊維5.0%以下
粗灰分8.0%以下
カルシウム1.0%以上
リン0.7%以上
カロリー330Kcal/100g
低カロリーフードの中でタンパク質量が成長を終えたラットの理想に一番近い数値と紹介されているのが、
粗タンパク質14.0%以上
粗脂肪5.0%以上
粗繊維4.0%以下
粗灰分5.0%以下
カロリー約330Kcal/100g
上記成分の残り、後述の%を全部足すと28%ですが、その残りは基本糖質です。
約74%でしょうか。
解説(これも抜粋)
生後三ヶ月からは大人となり、成長期ほどタンパク質が必要ではなくなります。
むしろ、高タンパクなペレットを三ヶ月を超えてからも自由に食べさせると肥満や病気の原因になります。
しかし、ここで注意です!オスラットは8-10ヶ月まで、メスラットは6-8ヶ月まで成長すると言われています。
生後三ヶ月からは大人となりタンパク質を抑える必要がありますが、まだラットの体は成長します!
なので、まだ成長するといわれている期間の大人ラットにはタンパク質18%ほどのペレットを、もう成長しきった大人のラットにはタンパク質14%ほどのペレットを目安に選びましょう。
人間など寿命の長い動物にカロリー制限やタンパク質の摂取制限を施しても効果はないそうですが、寿命の短いげっ歯類などにはタンパク質の制御は効果抜群のようです。
平均で30%寿命が伸びたという報告もあります。
という感じで、少し雑にまとめましたが、ネズミにとって理想とされるのが上記のような栄養バランスで間違いないようです。
そして、たんぱく質を抑える程、寿命も延びやすいという事、健康である事だと考える事が出来ます。
それでは、実験の食事内容です。
食事の量を減らさず炭水化物の量を制限し、その分をタンパク質や脂質で補う「糖質制限食」について、摂取と老化の影響を分析。
マウスに日本人の一般的な食事に相当する餌を与えた場合と、糖質制限食を与えた場合を比較した。
ビタミンやミネラルは同じ量を与えた。
日本人の一般的な食事というのは、恐らくですが、上記団体が運営している事ですから、PFCバランスが2:2:6のような、高炭水化物の食事だと思われます。
通常のネズミのエサとしても適切なバランスに含まれると感じます。
ちなみに、PFCバランスのPFCとは、
F=ファット(脂質)
C=カーボン(炭水化物)
の事です。
そして、糖質制限という事ですから、糖質を0に近い状態にし、残りを脂質・たんぱく質でしているでしょうから、PFCバランスは4.5:4.5:1くらいかもしれませんね。
発表はないので、憶測です。
ネズミの栄養バランスは、一般的な餌の成分に現れている通り、高炭水化物・低たんぱく・低脂質です。
PFCバランスでは、2:1:7くらいでしょうか?
高炭水化物が栄養の基本であり、さらに低たんぱく質の方がより寿命も延びやすいという体内の代謝構造があるラットに対し、真逆の高たんぱく・高脂質の食事を与えたらどうなるか?
結果は、東北大学院の発表通りになると思います。
ナンセンスです。
人間の代謝構造とは全く異なるラットをベースとしている部分も。
自分達にとって都合の良い部分を広める為に、都合の良い所だけを切り取って伝えようとする部分も。
相手を否定して、自分達に有益な情報を無責任に発信する部分も。
この実験は、冒頭に書きましたが、兎に卵を食べさせた事により、コレステロールが急上昇し、卵がコレステロールを上げる第一原因のような存在となったのに似ています。
兎は草食です。
にもかかわらず、肉食に該当する卵を無理やり食べさせています。
草を食べて健康を維持する代謝機能を持っている兎に、突然動物性たんぱく質を与えたら、身体の調子が悪くなるのは当然です。
こういった記事は、内容よりも、「いかにして、インパクトのある見出しをだして、相手(糖質制限)を貶めるか?」というプロパガンダです。
嘘も、何回も言い続ければ、本当になったりもします。
私の知り合いも、「糖質制限」と聞くと、「おやじダイエットの人が死んだよね」というようなネガティブな返事が返ってきます。
それくらいの効果を、今回の記事は与えているのではないかと危惧します。
それが目的なのかもしれませんが。
逆に言うと、こんなことをしないといけないくらい、切羽詰まった状態になっているのかもしれませんね。
困ったものです。