糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

ダイエットをすると便秘になるのは?

ダイエットをすると、共通した悩みが生まれやすくなります。


便秘
肌トラブル
精神的なイライラ
基礎代謝の低下

等々ありますが、今回は便秘(肌トラブルにも少し触れます)が起きる理由についてです。

 

よく言われるのが、

 

「食べる量が減ると、当然食べたものの残りカスが便になるわけですから便の量が減りますよね。
便の量が減ると便を排出するための”排便反射”が微弱になってしまい排便しにくくなってしまいます。」

 

というものです。

私も、この意見はある程度同意です。

 

便の内訳は、水分が多いですが、その消化されなかった食べかすと、身体の老廃物が含まれています。
割合で言うと、水分60%老廃物、新陳代謝により排出される腸細胞の死骸15~20%、細菌類の死骸10~15%、食べ物の残りかす5%という感じのようです。

 

ある程度という理由は、食べかすという部分が全体の5%しか占めないからです。

 

大きな問題は、「ダイエット」という行為で、どういう食生活をするかにあります。

一般的には、「ダイエット」というとカロリー制限が考えやすいので、これをベースに話を進めていきます。

 

カロリー制限の食事でイメージしやすいのは

総合的に食べる量を減らす(総摂取カロリーを普段よりも減らす)
カロリーの高いものを減らす(脂質・たんぱく質の摂取を控える)
甘い物を食べるのを控える(糖質摂取・間食を減らす)

といった所でしょうか?

(ここでは、食事の時間とか、食べ方・順番等については言及しません。
文章が長くなりすぎて、ポイントがずれてしまう可能性があるからです。)

 

ダイエットをする事で、食生活が一変する人が多いと思います。
最近は糖質制限が認知されつつあり、方法論が増えてきているので嬉しい限りなのですが、それまでは炭水化物や野菜を摂取して、たんぱく質と特に脂質の摂取を極力控えるという事が多かったと思います。

 

炭水化物と野菜なら、野菜を多く食べる傾向になるかもしれません。

ここでは、野菜中心のダイエットをしたとします。

野菜にもいろいろと種類や食べ方がありますが、サラダを中心とした生活とします。

サラダを食べる時も、カロリーを気にしてノンオイルドレッシングを選び、脂質摂取を控えたりすると思います。

 

となると、

野菜に含まれるビタミン・ミネラル・食物繊維
野菜のトッピングとしての僅かな鶏胸肉やささ身、シーチキン等のたんぱく源
ドレッシングやトッピングに含まれる僅かな脂質

といった感じでしょうか?

 

後は、健康に良いという事でバナナ・オレンジのような生フルーツを食べたり、スムージーをコンビニで購入したり、ヨーグルトを食べたりするのかなと思います。

他にも方法論は多々あるのでキリがないのですが、この食事を1週間以上継続するとします。

 

その結果、体重はある程度減少すると思います。(その理由はここでは省略します)


ですが健康状態の以上として出てくるのが、恐らく便秘です。(肌荒れも気になってくると思います。)

野菜から食物繊維をとっているし、表記しませんでしたが水分もそれなりにとっているとします。
それでも、便秘又は肌荒れになりやすいと思います。

 

理由は、脂質・たんぱく質の極端な制限にあります。

 


現在の厚労省が発表している表には、

20代女性で、だいたい2000㎉の摂取を目安としています。
推奨PFC(たんぱく質・脂質・炭水化物)バランスは、P:2 F:2 C:6です。(P400㎉、F400㎉、C1200㎉)
凄くざっくりであり乱暴かもしれませんが、換算すると肉で200g、油で45g、生米で300gといった感じです。(ここでは野菜はCに含めます。ほぼすべての野菜で一番占める割合が大きいのは炭水化物だからです)

で、上記の食事の摂取カロリーを、頑張って1400㎉とします。(もっと頑張っている人もいるかもしれませんが、目安とします)
これにPFCバランスをあてはめると、P:280g、F:280g、C:840gとなり、肉で140g、油で30g、生米で210gとなります。

これで、かなり摂取量が低くなり問題が生じやすくなるのですが、上記の食生活ではいびつな比率になります。

たんぱく質・脂質を極力抑えているので、この1400㎉のPFCバランスでの数値よりも、低くなっていると思います。
そして、生フルーツ・スムージー・野菜の摂取頻度が高いので、炭水化物比率が高いのではないかとイメージできます。

そうすると、PFCバランスはざっくりですが、1:1:8ぐらいの割合になると思います。


こうなると、どうなるか?

 

まず脂質です。

 

身体には食事から摂取が必要な、必須脂肪酸があります。
脂質の摂取機会を減らしてしまうと、当然こういった成分を摂取する機会が減り、細胞は脂質でおおわれて保護されていますが、それがうまく働かなくなったり、潤滑にものを運ぶ事が出来にくくなります。
脂質摂取の絶対量が少なくなると、脳・内臓といった身体の中心部分から優先的に栄養が運ばれ、重要な臓器を守ろうとします。
そのため、優先度の低い肌や爪、髪まで脂質が届ける事が出来にくくなり、荒れたり弱くなったりしてしまいやすくなります。

 

また、「便」は、油性です。燃料にもなるくらいですから。
そのため、いくら水分をとったとしても、脂質が十分になければ上手く体外に排出されにくくなってしまいます。
滑らかに進みにくくなりますから。
油性ペンの汚れを落とすのに油性の除去剤を使えば、簡単に汚れがとれるのと同じ原理です。

 

次にたんぱく質です。

 

便の成分で、老廃物、新陳代謝により排出される腸細胞の死骸15~20%、細菌類の死骸10~15%、と記載しました。
合わせると、約25~35%、だいたい3割程度がこれに該当する事になるのですが、これはたんぱく質が関連します。

 

老廃物除去・新陳代謝を行なうには、たんぱく質が必要です。
たんぱく質も脂質同様、身体の重要臓器に優先的にエネルギーが使われ、筋肉量や骨密度の低下、肌の張りが失われたり、ターンオーバーの周期が乱れて古い細胞の修復作業に遅れが生じてしまいます。

 

また、腸が動くにもエネルギーは当然必要ですが、そのエネルギー源は小腸がたんぱく質と脂質、大腸が食物繊維+腸内細菌由来のものと脂質(短鎖脂肪酸)です。


以上から、必要以上にたんぱく質・脂質を制限してしまうと、健康な身体の状態からどんどん遠ざかっていく可能性が高いという事が分かると思います。

 

色々なものを混ぜ込むと焦点がずれるので、便秘・肌荒れに言及してまとめると、


たんぱく質・脂質制限をすればするほど

腸細胞が活動するためのエネルギーが得られなくなる
ターンオーバーが乱れる
栄養が潤滑に行き渡りにくくなる
便が腸内でスムーズに移動しづらくなる
糞便の絶対量が少なくなって排出しにくくなる

 

もっというと、

便を構成する大きい部分を占める、水分・脂質・たんぱく質・食物繊維を意識して摂るようにしないと、便秘になるリスクが増大する


という事になります。


以上が、一般的なカロリー制限による「ダイエット」をする事で便秘になりやすくなる理由です。

もちろん、他にも理由があって便秘になる場合もあるので、考えやすい理由というだけであり、これが全てというわけではないです。