明治時代のある実験
エルウィン・フォン・ベルツがドイツから来日し、人力車の車夫の体力に驚いたことが記録に残っています。
東京から日光までを馬の場合は、途中で馬を6回取り替えて14時間かかったのに対し、車夫は同じ距離を1人で14時間半で走りました。
そのことに驚いたベルツは車夫の食事を調べました。
その結果、玄米おにぎりに梅干し、味噌、大根の千切りに沢庵というもの。
ドイツ式栄養学で分析すると明らかにたんぱく質が不足し、炭水化物に偏った食事栄養学とはかけ離れた食事を摂っていたので、栄養学に添い肉などを与えました。
栄養学に添う食事は車夫を3日で疲れさせ走れなくさせました。
一方、日本の伝統食の人力夫はなんと三週間もの間走り続けました。
そして元の食事に戻すと元のように元気に走れるようになったそうです。
肉を食べない日本食の方が体力がつくというような実例です。
これは、肉食VS和食と位置付けられるような話しで、結果日本人には和食が一番という時に説の立証として用いられやすいものです。
せっかくの論拠ですが、そんなに簡単に判断できるものではありません。
私は、一つの事に注目します。
エネルギーが糖質からケトンに代わるのに2週間~1カ月程度かかるが、そこは考慮されているのか?
エネルギー依存が、糖質→ケトンなりかけ→糖質に戻った のではないか?
という事です。
当時の食生活は、上記のように肉はほとんど食べず、穀類と植物性たんぱく質を中心とし、魚類を少々というものです。
現代で言えば、ベジタリアンに近いような生活をしていたと考えられます。
糖質がかなり多い生活をしているので、胃が糖化している可能性が非常に高いです。
胃の糖化に関しては上記リンクを張り付けておきますが、簡単に言えば、胃が糖質により正常な機能が損なわれるというものです。
肉食に変えるのもいいのですが、胃が糖化している状態では、タンパク質を消化するための酵素もあまり分泌できず、胃もたれのような消化不良の状態になります。
また上記したように、糖質から肉食(ケトン体質)に変わるのにも、2週間から1カ月程度かかります。
糖質から肉食に変わる時は、パフォーマンスが低下します。
長距離を走るという持続力を必要とするようなパフォーマンスは悪くなってしまうのです。
約1か月かけると、もとのパフォーマンスを期待できるようになるのですが、3日で音を上げた事から、実験は3日程度、長くても1週間程度ではないでしょうか?
食事を肉食から糖質中心に戻したのなら、ホメオスタシスの働きにより、普段通りに戻ったという事だと考えます。
肉を食べない日本食の方が体力がつき、結果日本人には和食が一番というような単純な話ではないのです。
そういった身体の環境の変化に関するプロセスを踏まえないで検証したものを、揺るぎない証明だとして突き出されても、ちょっと待てよ?と思う訳です。
この話を切り取る限りは、和食が有益だという見方も出来ます。
少し話を広げてみましょう。
当時の平均身長は150~160㎝ほどだったといわれます。
筋肉に関しても、隆々であるよりは、持久力を求めるなら余分な筋肉が無い方が有利です。
これは現代のマラソンランナーの体つきをみても分かると思います。
平均寿命は45歳前後と、あまり長くありません。
医療の進歩や食料事情の改善もあり、現在では80歳を超えています。
環境が違うので純粋な比較はできませんが、動物性たんぱく質の摂取は少なかったので、体格というレベルでは現在の方が良いと考えます。色々な場面で有利と思いますから。
皆さんはどちらの生活が良いと考えるでしょうか?
この話だけでは、答えが出ないかもしれません。
色々な角度から見ないと、誤った認識を与えてしまう可能性があるという一例です。