糖質制限食 栄養のあれこれ

糖質制限食や栄養に関する事について、管理栄養士・登録販売者の視点で考えていきます。

エネルギーが糖質から脂質に変わるとはどういうことか?

我々人間がエネルギーとして使う事が出来るのは、ざっくり言うと糖質と脂質です。

多くの人がそうなのですが、現在、糖質をメインのエネルギーとして生活をしています。

糖質制限食、またはそれに近い生活をしている人は脂質をメインのエネルギーとしています。

つまり、普段から糖質を摂取しているかどうかで身体はそれに順応していきます。
糖質を摂取していれば糖質を。
糖質を摂取していなければ脂質を。
という具合です。

 

今の食習慣では、糖質の多い食品(米・小麦・砂糖・果実etc.)で溢れている環境になっています。
大量に存在し、比較的安価で購入する事が出来る。
それが文化として根付いている。
先人達の技術や情熱もあり、ここまで文化が成熟してきています。

 

ここで、肝臓のエネルギーの代謝の順番について話をします。

肝臓は、私たち人間が、健康な状態で生活できるよう、色々な働きをしています。

大きく分けて、貯蔵・合成・解毒・分解を行なっています。

そしてその順番は、私たちの臓器に害を与えるものを無毒化すべく、優先順位に従って働いています。

まず最初に、アルコール類。

酒を飲んだら、二日酔いになったりしますが、体内に取り込まれた瞬間から、最優先で無毒化していきます。

でも、それが大量であったり、度数が強かったりすると、無毒化するのに時間がかかり、二日酔いになってしまったりします。

薬も優先して代謝されます。
薬も身体にとっては異物です。
肝臓が代謝を行ないます。
その代謝がどれだけカバー出来るかどうかにより、薬が効きやすい・効きにくいが、個人差として現れると考えています。

 

次に糖質です。

口から入れて、約30分後には血糖値が上昇します。(もっと早い場合もあります)
それを肝臓・すい臓がメインとなって安定させていく働きをします。
不足していれば肝臓が糖新生により血糖値を上昇させ、多ければすい臓がインスリンを使って血糖値を下降させる働きをします。

 

ついで脂質。

糖質が少なくなり、それだけで血糖値の維持が出来なくなると、脂質が代謝されていきます。
脂質は少ない量で、糖質よりも多くのエネルギーを生みだす事が出来ます。(糖質4㎉、脂質9㎉)
糖新生により、ブドウ糖を作り出し、血糖値の維持・エネルギーの産出に役立ちます。

 

最後にタンパク質。

タンパク質自体も、エネルギーを生み出す事は出来ます。(4㎉)
ですが、その出番が来るときは、人体にとって非常に危険な状態である可能性が高いです。
タンパク質は人体を構成するものです。
筋肉・臓器・体液・ホルモン・酵素・レセプター・・・。
全てに関わるのがタンパク質ですし、身体の構成比15%を占めています。

糖質・脂質を補う事が出来ないのであれば、自身の筋肉をすり減らし、生命維持に費やそうとします。

以前、リフィーディング症候群の話をしましたが、それに該当していくという事になります。

どんどん筋肉がやせ細り、臓器も正常に働くことが出来ずに、死を迎えてしまいます。

そうならないようにしっかりとエネルギーを補給しないといけないです。

 

ここで、血糖値について触れていきます。

 

通常は70mg/dl~120mg/dlの間ですが、血糖値は高すぎても低すぎても良くないです。
高過ぎる状態が恒常化してしまうと、糖尿病・神経障害・血行不良・腎障害・記憶障害・失明etc.と、様々な症状を引き起こしてしまいます。
逆に低すぎると、
70mg/dl以下で異常な空腹感・脱力感・生あくび・動悸・冷や汗・手や指の震えなど。
50mg/dl以下で不安感・動悸・冷や汗・手足の震えなど。
35mg/dl以下で意識レベルの低下、ろれつが回らなくなったり、めまいや疲労感など。
20mg/dl以下で痙攣や意識を失うことがあり、昏睡状態になってしまうと死に至ることもある。

急激な上昇にはある程度の耐性を備えている(症状が出るまでに長期間を要する場合がほとんど)が、急激な低下に関しては、即時対応しないと、生命維持に関わってきます。

 

補足
急激に低下するのは、処方される薬効の場合がほとんどで、正常にホルモンが作用しているなら、一気に下がって生命維持を脅かす程にはならない。
飢餓で苦しむといっても、水があれば1~2週間程度、水も断てば3日~1週間は耐えられると言われています。

 

インスリンは、余分な糖を肥満細胞に貯蔵し、血液内にある糖を少なくするよう働きます。
逆に血糖値が低いと、脂肪を燃料に、アミノ酸や乳酸等からブドウ糖を作り、血糖値を上昇・安定させます。
それは成長ホルモン、副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)、副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)、甲状腺ホルモン、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンが働くことで血糖値が上昇します。

血糖値を下げるホルモンは、インスリンだけです。

 

という事は、

 

血糖値を下げるという事よりも、上昇させる方が人間の本能にとっては優先事項であるという事が考えられます。

急激な低下に対しては、何をおいてでも、あらゆる手段で血糖値を上昇させねば生命が維持できない。
あらゆる手段を総動員するため、数多くの血糖値を上昇させる作用をもつホルモンが存在する。
急激な上昇に対しては、ある程度の耐性があるし、貯蔵もしないといけないし、身体を動かす事でエネルギーも速やかに消費されるので、急激に通常値まで下げる必要はない。
上昇したものを下げる事は必要だが、即時性を求められていないので一種類しかホルモンは存在しない。

という見方ができないでしょうか?

ちなみにインスリンは常時少量ずつ分泌されており、血糖値を安定した状態に保つ働きを担っています。


血糖値はここでいったん終了して、次は、三大栄養素について触れていきます。

 

一般的に言われているのは、

糖質はエネルギー源。糖質は消化・吸収されやすいため、脂質に比べてすぐにエネルギーとして利用される。
糖質はブドウ糖に分解されて、筋肉や肝臓などに蓄えられるが、蓄えきれなくなったブドウ糖は、脂肪酸に変えられて脂肪細胞に蓄積される。糖質も体脂肪の原因になるのである。

 

脂質とは、生態成分の中の水に溶けない物質の総称であり、脂肪酸でできている。
主にエネルギーとして利用される成分であり、細胞膜の成分・ホルモンの材料でもある。脂溶性ビタミンの吸収を高める働きもある。
体内では作り出すことができない脂肪酸を必須脂肪酸と言い、食品から摂取する必要がある。必須脂肪酸は、代謝の過程などで多くの役割を果たしているため、不足すると健康に悪影響を及ぼす。

 

たんぱく質アミノ酸によって構成される高分子化合物である。
たんぱく質は、筋肉、臓器、髪の毛、爪、皮膚、ホルモン、酵素、抗体など、体内の多くのものを構成している成分であり、動物性食品に含まれている動物性たんぱく質と、植物性食品に含まれている植物性たんぱく質に分類できる。
アミノ酸は、体内で作られるアミノ酸と、体内では作られず、食品から摂取する必要があるアミノ酸必須アミノ酸)に大別できるが、食品に含まれている必須アミノ酸の組成を評価し、数値化したものがアミノ酸スコアである。
良質なたんぱく質とは、このアミノ酸スコアが高いものを言い、100に近いほどアミノ酸のバランスが良いことを示す。


といった感じでしょうか。

 

糖質がエネルギーに変わるスピードは、この中で一番早いです。
スポーツでも、瞬発力勝負のような競技、例えば100m走といった無酸素運動が重要視されるような競技では、とても有効に働いてくれます。
この三大栄養素の中で、最優先で代謝されます。
活動するエネルギーとしては使いやすく、飢餓に備えて(?)脂肪を生み出す作用もあるからです。


次いで脂質です。
必須脂肪酸を摂取するためにも、重要な栄養素です。
また、少量で多くのエネルギーを生みだす事が出来るので、効率の良い栄養素でもあります。

 

最後にタンパク質
タンパク質にも必須と呼ばれるアミノ酸があり、栄養素を取り込まないといけないです。
身体を構成するのにも必要であり、日々ダメージを受ける組織・器官・細胞修復のために必要な栄養素でもあります。
ケガが早く治るのも、タンパク質が豊富にあるからこそです。
(ケガとタンパク質の関係は、後日、別の形で話をしたいと思います。)

 

 

少し長くなっているので、ここで一度切ります。